満身創痍の鬼気迫る天龍源一郎「俺が動けなくなったら誰が家族を守るんだ」
1950年生まれの天龍。60代も後半にさしかかり、家族のためにやっと引退を決心できた。現役時代は、相撲でもプロレスでも引退という選択肢はなかったという。 「やめるイコール、しっぽを巻いて逃げた、って思われるのが嫌なんですよ。相撲の稽古が厳しくてやめたんだろうとか、プロレスが怖くて逃げたんだろうとか、そんなこといわれてたまるかという一心で、辛いこともやり過ごした。中学卒業と同時に福井の田舎から上京し二所ノ関部屋に入って…以来、東京に半世紀以上いるのは、その気持ちがあったからというのが正直なとこです」 鍛え上げた肉体を過激にぶつけ合うハードなスタイルで、ひたすらに現役生活を送った天龍。そのぶん、受けたダメージも大きい。映画が追った最後の一年は、まさに満身創痍の天龍が、最後の思いの丈をリングにぶつける日々だった。『こんなふうに燃え尽きることができたら幸せだ』…この映画を見れば、どんな仕事人でもそう思うのではないか。