中国で再生数稼ぎのフェイク動画摘発相次ぐ
【東方新報】中国のSNS上で「再生数稼ぎ」を目的にしたフェイク動画が横行していることから、ネット管理当局が摘発キャンペーンに乗り出している。 摘発されたフェイク動画の多くは、SNS上で拡散されやすいショート動画だ。例えば、保護者からネグレクトされた子どもが残飯を食べて生活している様子を投稿したり、元夫に殴られて警察に通報する場面をリアルに投稿したり、貧困地域の高齢者に慈善活動として現金を配る自分の様子を投稿したり…。いずれも他人を雇って演技させるなど事実無根のフェイク動画だったという。 中国のショート動画SNSユーザーは10億1200万人(2022年12月現在)に達し、1日平均の利用時間は1人当たり2時間半を超えている。ショート動画SNSは、その利用者の規模、接触時間ともに巨大な影響力を持つようになっている。 フェイク動画の拡散を受けて、中国サイバースペース管理局は2023年12月12日、「ショート動画の好ましくないコンテンツ指向問題についての是正特別措置」を発表し、取り締まり強化を打ち出した。 この通知は、業界の健全で秩序ある発展を促進するため、虚偽情報やポルノ、差別を含む不適切なコンテンツなどを集中的に取り締まる方針を示している。 さらに、海外ではティックトック(TikTok)として知られるショート動画プラットフォーム大手「抖音(Douyin)」も定期的に投稿ルールを見直し、違法行為が横行しないよう対策を講じている。 しかし、再生数を稼いでビジネスにつなげるインフルエンサーのマーケティング手法はSNS界で確立されており、本当のようなショート動画の最後に小さく「この動画はフィクションです」と書き添えるグレーな投稿も目立っている。こうした動画の投稿者は、自分たちはCMや映画のように「演出」しているのだと主張するからやっかいだ。 演出はどこまで許されるのか。張芸謀(チャン・イーモウ、Zhang Yimou)監督の映画『幸福時光(邦題:至福のとき)』のラストシーンを思い出した。目が見えない純真無垢(むく)な少女ウー・イン。その継母と結婚したい中年男のチャオは、自分は金持ちだとうそをつく。そのうそを重ねて、目の見えない少女に働き場所を提供することを約束するが、やはりうそでごまかすことに。期待する少女をがっかりさせないように、職場の仲間たちと必死にうそを重ねるチャオ。その優しいうそに包まれて、孤独だった少女の表情は明るさを取り戻していく。優しいうそが招いたラストシーンは決してハッピーエンドではないが、じんわり幸せな気持ちになるものだった。 中国では春節(旧正月、Lunar New Year、2024年は2月10日)を前に、貧困家庭や障害者施設などに募金をする人が増える。だから春節を狙って、詐欺的な投稿も増えるのだろう。優しいうそは映画の世界にしかないのかもしれないが、悲しいうそをつく動画投稿者が少しでも減るといい。(c)東方新報/AFPBB News ※「東方新報」は、1995年に日本で創刊された中国語の新聞です。