昌平が3試合目にして初の無失点勝利!浦和南を下し2連覇達成
第102回全国高校サッカー選手権埼玉予選最終日は、埼玉県民の日の11月14日に埼玉スタジアムで決勝が行われ、昌平が浦和南を2-0で破り、2年連続6度目の優勝を飾った。昌平は12月28日に開幕する全国選手権に出場する。 今季高円宮杯 JFA U-18サッカープレミアリーグ 2023 EASTに昇格した昌平は、スーパーシードとして準々決勝から登場。ここまでの2試合を9得点・3失点で勝ち上がってきた。全国高校総体予選準優勝の浦和南は、初戦の2回戦から準決勝まで14得点・3失点の戦績で2年ぶりのファイナルに進んだ。 戦術こそ異なるが、攻守に独自のスタイルを確立したチーム同士の決戦。昌平が敵の陣営でパスを回しドリブルで仕掛ければ、浦和南は厳しいプレスを継続してバイタルエリアでは自由にさせなかった。 最初の決定機は昌平が迎えた。前半5分、MF山口豪太(1年)が左を突破してグラウンダーの最終パスを供給。1トップの小田晄平(3年)が合わせたが、左に外れて枠内に飛ばなかった。 浦和南が27分、FKから右に展開しMF志田出帆(3年)のシュートが外れた1分後だった。昌平がラッキーな先制点をものにする。 ボランチ大谷湊斗(2年)からパスを受けたSB田中瞭生(3年)が、右サイドから攻め上がって左足でシュート。相手DFがクリアしようと伸ばした足に当たってコースが変わり、ゴールに吸い込まれた。 浦和南には何とも不運な失点となったが、DFならシュートコースを消すのが鉄則とあり、ミスでもなければ責任もない。 昌平はアディショナルタイムにも小田が決定打を放ったが、浦和南は鋭い出足でブロック。前半は1-0でタイムアップになった。 後半開始から昌平は小田に代えてFW鄭志鍚(2年)を投入。12分の鄭のシュートは枠外で、16分に右CKから主将のCB佐怒賀大門(3年)が打った強烈な一打も相手DFに弾き返され、加点の機会を逸した。 前半35分に送り込まれていたMF三浦悠代(2年)が30分、左から惜しいシュートを放った。このイメージが残っていたのか、三浦は2分後に左サイドから中央に進入すると、絶妙の間合いで狙い澄ましたシュートをゴール右隅に蹴り込み、駄目押しともいえる2点目を挙げた。 「土谷さんがマンマークされているので、中に入ってボールを受けながらコンビネーションで崩すように指示されました。あのコースを狙ったので決まってうれしかった」 三浦は武南との準決勝に続き、今大会2試合目の出場。トーナメントの公式戦では初ゴールとあり、じっくりと喜びをかみ締めていた。浦和南の背番号10、MF伊田朋樹(3年)は2得点した聖望学園との準決勝後、「決勝の前半は無失点か1失点で耐えることが大事」と話していた。失点1は想定内だ。 まず1点を追い掛ける後半9分、パワフルに突破するMF日高大佑(2年)を入れ、2点目を失った直後にはMF竹内翔馬(3年)とFW掛谷羽空(2年)を投入して戦況打開を図った。竹内はロングスローからチャンスをつくり、日高は39分に左CKのこぼれ球を左足でたたいたが、枠を捕らえられなかった。 3分のアディショナルタイムが終了。昌平が3試合目にして初の無失点勝利と連覇を飾り、浦和南の5年ぶりの優勝はならなかった。 ベテランの野崎正治監督は「相手は守備も良くスキがなかった。中盤の3人にこぼれ球を拾われ、回収できずに後手に回ってしまった」と残念がった。それでも「ここまでよくやったと褒めてあげたい。公立校の伝統を消してはいけない。OBとしてもうれしい」と奮闘した教え子でもある後輩の労をねぎらった。 主将の左SB橋本優吾(3年)は「準備はしてきたが、足りないところがあったのかもしれない。前半1失点なら大丈夫だったけど、後半に盛り返せなかったことが悔やまれる」と敗因を語った。 昌平は10月3日付で藤島崇之監督が退任。代行として指揮を執る村松明人コーチは「バックラインとGKが崩れなかったことが勝因のひとつだと思う」と述べた。初采配となった10月7日のプレミアリーグ、尚志(福島)戦からここまでの苦労については「今までやってきたものをベースにするつもりでしたが、(逆転負けした)尚志戦の結果から全国のトップは難しいと思い、サイドバックやボランチのあり方を考えました」と説明した。 尚志戦で左SBだった西嶋大翔(3年)が、今大会から2列目に移り、2列目の大谷がボランチへ移動。ボランチだった前田大樹(3年)を左SBで起用したのだ。 8月に左ひざ前十字靭帯を断裂し、長期離脱中のCB石川穂高(3年)に代わって主将を任された佐怒賀は、「プレミアリーグでも悪い試合が続いたけど、日本一になる目標に向かって前進できました。夏休みにチームの考えがひとつになり、みんなで共有できたのが大きかった」とチームの過去最高成績、ベスト8を飛び越えて全国の頂点を狙う心意気を示した。 (文=河野正・写真=古部亮)