「木が牛の飼料に」日本の巨大フードテック知られざる全貌
注目される地域とニンジャカンパニーの存在
たねまきでは、栽培時の水やり後の排水(廃液)を約90%リサイクルしており、温度管理のLNGの燃焼にともなうCO2はミニトマトの成長に欠かせない。また、丸紅の陸上養殖は、アトランティックサーモンの価格が高騰していることに加え、輸送にともなう環境負荷は大きく、国内供給が果たす役割は大きい。 ソフトバンクの養殖の取り組みでは従来の魚の値付けは「魚種」と「重量」のみで、また果物の糖度のような品質の指標を持たなかったことから、品質規格標準化プロジェクトを開始。魚の流通が大きく変化することで、水産業そのものが活性化することに期待が集まる。 それぞれが、食糧問題の解決という大義とともに環境問題を同時に解決する可能性を持つことで、業界が持続可能性の言葉の通り持続して発展する期待感がある。生産効率や省人化だけではないこの高い視座があるからこそ、これらの企業は注目されている。 ■注目される地域とニンジャカンパニーの存在 フードテックおよびアグリテックの進展は、食糧危機への対応や持続可能な産業の構築において極めて重要である。 ソフトバンクや日本製紙、丸紅といった企業が、AI技術や持続可能な資源利用を通じて新たなビジネスモデルを創出し、一次産業の活性化に寄与し始めている。 しかし、今回紹介したのはほんの一部に過ぎない。優れた技術をもつ「ニンジャカンパニー」の技術力は長年の歴史と産業クラスターのなかで研ぎ澄まされており、世界でも通用する優れた技術が多い。彼らはまるで忍者のように、目立たずに活動しているが、その技術は非常に価値が高い。今後のビジネスにおいて、こうしたニンジャカンパニーとの連携が鍵となるだろう。 また、地域連携も重要である。例えば静岡県は陸上養殖の産業クラスターが形成されつつあり、NTTや関西電力などの企業も静岡県で陸上養殖事業に参入している。 地域社会全体での連携が進んでおり、県としてもその産業を後押しする機運が高まっている。こうした大手企業と中小企業のプロジェクトは、地域社会の活性化と持続可能な産業の構築に大きく貢献している。 フードテックやアグリテックの分野での成功は、これらの企業の協力なくしては成しえない。持続可能な食料供給と産業の未来を築くために、ニンジャカンパニーの重要性を再認識し、彼らとの連携を深めていくことが求められる。こうした取り組みが、食糧問題の解決や環境負荷の軽減に寄与し、より持続可能な未来をつくり出すことにつながると信じている。 大野泰敬◎1978年、東京生まれ。ソフトバンク、CCCで新規事業に従事し、独立。2012年企業の事業戦略や新規事業創出を支援するスペックホルダーを起業。東京オリンピック大会組織委員会ITアドバイザー、農水省客員研究員、明治大学客員研究員など歴任。
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