<飛躍!今年こそ・健大高崎2021センバツ>第2部/1 選手慕う「群馬のおやじ」 父母会長・吉田順さん(53) /群馬
3月19日に開幕する第93回選抜高校野球大会(毎日新聞社、日本高野連主催、朝日新聞社後援、特別協力・阪神甲子園球場)で、健大高崎は大会初日の第3試合(午後3時20分開始予定)で下関国際(山口)と対戦する。コロナ禍の逆境をはねのけ、2年連続5回目の選出を決めた選手たちを支えてきた「裏方」の人々を紹介する。【川地隆史】 ◇隔週日曜、食事の支援 「群馬のおやじ」。吉田慎之輔(2年)の父で、父母会長を務める吉田順さん(53)は選手たちにそう呼ばれて慕われている。 選手の約8割は親元を離れて寮生活をしているが、日曜日はスタッフが不在のため、食事は自分で用意しなければならない。「いっぱい食べて存分に活躍してほしい」。吉田さんは隔週日曜日、空腹の選手たちに食事をごちそうしている。 定番の行き先は、焼き肉店。新型コロナ対策で、換気の良い店を選ぶ。「密」を避けるため、一度に連れていく人数は3~4人。「全員が自分の子どものようなものですよ」。吉田さんにとっても、育ち盛りの選手の食べっぷりを見るのは大きな喜びとなっている。 吉田さんによると、一番大食いなのは堀江晃生(2年)だ。山盛りの白米が盛られた茶わんを片手に、大量の肉を平らげるという。「一生懸命食べて次の日に活躍するとうれしいですよね」。堀江も、「たくさん食べさせてもらって体も大きくなり、感謝しています」と語る。 選手を外食に連れ出すきっかけは、2019年夏ごろだった。息子の慎之輔に「他の子も連れていきたい」と言われ、最初は数人を誘ったが、その後は他の選手も続々と集まるようになった。 吉田さんは「今では選手たちから『次いつ連れて行ってくれるんですか』なんて言われるようになっちゃった」と苦笑いするが、「県外から来ている子が多いので、少しでも気晴らしになればいい」と思っている。 吉田さんは富岡市内の印刷会社で常務を務めている。健大高崎の野球場に掲げられているチームの代名詞「機動破壊」や「高崎から日本一へ」と書かれた横断幕は、吉田さんの会社が作製を引き受けたものだ。 センバツまで1カ月を切った。「観客を魅了する野球をしてほしい。良い結果を残せたらまたおいしいものを食べに行こう」。群馬のおやじは、我が子同然の選手たちの活躍を心から願っている。=つづく