60代で5種類以上の薬を飲んでいると転倒リスクが2倍に…健康長寿につながらない、本当は怖い薬の副作用とは
薬の多量摂取で転倒リスクが倍に
多くの種類の薬を一緒に飲むことでどのような作用が及ぶのかはほとんど検証されていないのですが、唯一わかっているのは、5種類以上の薬を飲むと転倒のリスクが倍になるということです。 特に女性の場合は骨粗鬆症の傾向もありますから、転倒したら骨折する可能性が高く、それがきっかけで体の自由が効かなくなってしまう危険もあります。これはもう、立派な薬害ではないでしょうか。 近年高齢ドライバーの暴走事故が問題になり、認知機能や判断力の話を持ち出して、あたかも年齢だけが原因であるかのような話になっていますが、そんなことよりむしろ服用している薬が影響していると私には思えてなりません。 高齢者はたいがい何らかの薬を服用していますから、降圧剤で血圧が下がりすぎたり、糖尿病の薬で極端な低血糖に陥ったりしたせいで、意識障害を起こしてしまったのかもしれません。 他の病気の薬のせいでせん妄という意識障害のような症状が出ていた可能性だってあると思います。もちろん意識がもうろうとした状態はとても危険で自動車の暴走事故が起こっても不思議ではありません。 製薬会社に忖度しているのか何なのかはよくわかりませんが、テレビなどでそういう問題に声をあげる人は私の知る限りほとんどいません。そんな重大な問題を一切検証することなく、「年寄りは免許を返納しろ」という空気をつくり上げていくことに私は強い憤りを感じずにはいられません。
薬の相談に乗らない医者は切り捨てよう
医者にもらった薬を言われるがままに飲み続けて、いつの間にか薬漬けになり、むしろ体調が悪くなったり、寿命を縮めたりするリスクはみなさんが想像している以上に高いのです。 この薬を飲むと体調が悪くなるなと思ったら、思い切って量を減らしたりやめたりしてみてもいいと私は思うのですが、自己判断でそれをするのはやっぱり怖いという方もいるでしょう。 だからといって我慢して飲み続けるのは、それ自体もストレスになっていいことは何もないので、どのような症状が出ているのかを処方した医師に必ず相談するようにしてください。 「副反応のようなものだから仕方がないですよ」とか「頑張って薬を飲み続けましょう」と言うような医者は、どれだけ親切そうな顔をしていても、教科書通りの診察しかできないダメな医者だと思います。 うまく言い返すことができず、その医者の言いなりになる方が多いのですが、本当に健康でいたいなら、ダメ医者はさっさと切り捨てて、別にいい医者を見つけるべきです。 理想的なのは患者が苦痛なく、そして、できるだけ生活の質を落とさずにいられるよう親身になって考えてくれる医者です。多くの高齢者を診てきた医者であればそのノウハウを持っている可能性が高いですし、70代・80代になっても良い相談相手になってくれるはずです。 どんなに腕がいいと評判でも、嫌だなと感じる人や、自分には合わないなと感じる人とは無理して付き合わないのが原則であることは、相手が医者であっても同じなのです。 文/和田秀樹 写真/shutterstock ---------- 和田秀樹(わだ ひでき) 精神科医 1960年大阪府生まれ。精神科医。東京大学医学部卒。アメリカ・カールメニンガー精神医学校国際フェロー、浴風会病院精神科医師、東京大学付属病院精神神経科助手などを経て現在、和田秀樹こころと体のクリニック院長。立命館大学生命科学部特任教授。30年以上にわたって高齢者医療の現場に携わる。2022年7月より日本大学常務理事。主な著書に『80歳の壁』(幻冬舎)、『70代で死ぬ人、80代でも元気な人』(マガジンハウス)など多数。 ----------