突然、看護師が「遺体の肛門」に指を突っ込んで…人が「死んだあと」に起こる「意外なやりとり」
---------- だれしも死ぬときはあまり苦しまず、人生に満足を感じながら、安らかな心持ちで最期を迎えたいと思っているのではないでしょうか。 【写真】人が「死んだあと」に起こる「意外なやりとり」 私は医師として、多くの患者さんの最期に接する中で、人工呼吸器や透析器で無理やり生かされ、チューブだらけになって、あちこちから出血しながら、悲惨な最期を迎えた人を、少なからず見ました。 望ましい最期を迎える人と、好ましくない亡くなり方をする人のちがいは、どこにあるのでしょう。 *本記事は、久坂部羊『人はどう死ぬのか』(講談社現代新書)を抜粋、編集したものです。 ----------
“エンゼルケア”という欺瞞
患者さんが亡くなると、いわゆる“エンゼルケア”という死後処置が行われます。入院患者さんが亡くなったときは、看護師がすべてやってくれるので、病院勤務のときは手を出すことはありませんでした。医者は医局にもどって、カルテや死亡診断書を書いていればいいのです。 しかし、在宅での看取りでは、目の前で看護師がするのを手伝わないわけにはいきません。ご遺族に洗面器に湯と、捨ててもいいタオル類、ゴミ袋、そしてご遺体に着せる死に装束を用意してもらい、患者さんが男性のときは髭剃りとセッケン、女性なら生前に使っていた化粧品となども持ってきてもらいます。 ご遺族のなかには、死後処置を手伝わせてほしいとおっしゃる方もいますが、Wさんの場合は、集まっていた親類一同が別室に引き揚げました。 このときいっしょだった看護師は、中堅どころの熱心な女性で、不慣れな私にテキパキと指示を出してくれました。 まずゴム手袋をはめて、点滴のルートと導尿のカテーテルを抜き、おしめをはずし、寝間着を脱がせて湯をします。女性なので下半身は看護師がやり、私は上半身を担当しました。やせ細った身体には感慨がありますが、それを抑えて作業に集中します。看護師はそれこそ介護と同じ熱心さでていねいに拭き上げます。前面が終わると、うつぶせにして背面を拭き、終わるともとにもどします。 湯のあとは、口や鼻に生綿という水分を吸わない綿を詰めるのですが、口は口腔だけでなく、割りを使って咽頭から食道の入り口あたりまで詰めるように言われます。そうしないと、胃液が逆流して口から洩れる危険があるからです。口腔に詰める綿は量を加減して、左右対称に、自然な形でふっくらするように詰めます。逆に、鼻孔に詰める綿は、量が多いと豚のようになるので、横に広げないように注意しなければなりません。 死後硬直は顎からはじまるので、口を開いたままにしておくと、あとで閉じられなくなるので、綿を詰めたらしっかり閉じさせます。どうしても開く場合は、包帯で顎紐のように縛ります。 きちんと形を整えたら、看護師がWさんの髪を梳かし、時間をかけてファンデーションを塗り、口紅を塗って、にうっすら紅をさしました。眉とアイラインを引くと、やつれていた顔がくっきりとし、生気を帯びた寝顔のようになります。