検察の思惑 「被告の言動は想定内」【連載:京アニ事件ー傍聴席からの考察ー第2回】
■「さっさと死んでくれということですか!」」
去年9月20日には、被害者参加制度を利用し、遺族や代理人の弁護士から、青葉被告に質問する機会が設けられた。遺族らの苦悩がまじる問いかけに対し、青葉被告が苛立ちを隠せない場面が度々見受けられた。 (遺族代理人)「(京アニ事件の前に)強盗事件を起こす前、『蒸発』しようと掲示板に書き込んでいましたが、『蒸発』とは何を指しますか」 (青葉被告)「人間関係を全部切って、違うところで人生をやり直すことです」 (遺族代理人)「(京アニ事件の)犯行前の選択肢として(蒸発は)なかったのですか」 (青葉被告)「こんなことするならさっさと死んでくれということですか!」 イライラした口調で語気を強めるように話した青葉被告。これまで感情の起伏をあまり見せてこなかった法廷で、初めて苛立ちをあらわにしたように見えた。また、遺族代理人からの“逆質問”で、裁判長からたしなめられる場面もあった。 (遺族代理人)「あなたが言っていた(犯行の直前に感じた)『良心の呵責』とは何を指しますか」 (青葉被告)「それなりのことをすると多くの人が死ぬということです」 (遺族代理人)「死ぬのは分かっていたが、被害者の立場は考えなかったということですか」 (青葉被告)「逆にお聞きしたいですが、自分(青葉被告の作品)が(京アニに)パクられたり(青葉被告が京アニの監督に)レイプ魔と言われたことに対して、何か感じたのでしょうか。ただ被害者という立場だけで述べて、良心の呵責はないのですか」 (裁判長)「あなたが質問する場ではないので、質問に答えてください」 また、別の遺族からの質問にはー。 (青葉被告)「自分の立場では、どんな刑であろうと罰を受けないといけないと思いますが、(自分の作品をパクった)京アニが不問なのはどうなのかと思います。盗作をやって稼いだお金を貰っている時点で、知らないというのはどうなんだろうと思います」 と、盗作されたと主張する作品とは無関係の社員についても、「知る努力をしないのが悪い」と口にすることもあった。 一連のやり取りに対し、青葉被告の代理人弁護士から質問が及ぶと、青葉被告は「やはり追及が厳しくなった。疲れています」などと言葉を返した。京アニと犠牲者に対する青葉被告の言動に、裁判に参加する遺族は顔をしかめていた。
■強まる京アニへの〝憎しみ〟検察の狙い筋か
検察官、遺族らからの被告人質問を通じて明らかになったのは、青葉被告が持つ「京アニに対する強い恨み」だ。弁護側の質問を終えた時点での青葉被告への印象は「つらい過去や突飛な妄想を話す”不気味な存在”」というものだった。 一方、検察の質問では苛立ちを見せたりするなど“人間味”を感じさせる場面が目立った。検察は、被告人質問を通じ青葉被告の京アニに対する憎しみの感情を浮き彫りにすることで、「京アニへの恨みと「ナンバー2(闇の人物)」は無関係であることを主張しているとみられる。