アイフォーンへの生成ＡＩ機能搭載を発表するティム・クックＣＥＯ（左）＝ＡＰ

　【ニューヨーク＝小林泰裕】米ＩＴ大手アップルは１０日、主力スマートフォン「ｉＰｈｏｎｅ（アイフォーン）」に独自開発した生成ＡＩ（人工知能）機能を搭載すると発表した。苦戦が続くアイフォーン販売をテコ入れする狙いだが、市場では「革新性がない」など厳しい反応が相次いでいる。

（写真：読売新聞）

　「アップル・インテリジェンス」と名付けた生成ＡＩ機能では、電子メールの要約や返信内容の作成、写真の加工などができる。まずは英語のみに対応し、今秋から無料で提供する。利用にはアイフォーンの最新機種「１５　Ｐｒｏ」「１５　ＰｒｏＭａｘ」が必要になる。

　アイフォーンへの生成ＡＩ機能の搭載にあわせ、アップルは、対話型ＡＩサービス「チャットＧＰＴ」を開発した米オープンＡＩとの提携も発表した。利用者が望めば、アップルの音声アシスタント「シリ」で、チャットＧＰＴの回答を提供することを年内に始める。

　アップルのティム・クック最高経営責任者（ＣＥＯ）は、「ＡＩの導入で、アイフォーンのサービスは生まれ変わる」との声明を出した。

　ただ、１０日のニューヨーク市場でアップルの株価は２％下落した。「利便性は向上するが、ブランドを前進させるほどの革新性はなかった」（調査会社フォレスターのディパンジャン・チャタジー氏）との見方が広がったためだ。

　アイフォーンはアップルの売上高の約半分を占める屋台骨だが、２０２４年１～３月期の販売は前年同期比１０％減に落ち込んだ。韓国・サムスン電子や中国勢のスマホに比べてＡＩ機能の搭載が遅れたことなどが一因で、アップル全体でも、直近６四半期のうち５四半期で売上高が前年同期を割り込んでいる。

　生成ＡＩの開発を巡り、アップルはマイクロソフト（ＭＳ）やグーグルなどのライバルに出遅れているとされ、株価の伸びも見劣りしている。ＭＳの出資先であるオープンＡＩと提携した背景にも、開発の遅れがあるとの見方が出ている。