「かのこ様」シリーズ最新作。陽キャ・陰キャをカテゴライズする現代に届けたい、誰かを見上げるヒーローを描く青春漫画『恋だの愛だの~君は僕の太陽だ~』【書評】
11月5日に刊行された2巻では、いよいよ大人になった山田たちが描かれる。迷い、自分で決めた自分の身の丈に振り回されていた高校時代からずいぶん成長し、芸人としても売れ始めた23歳の姿だ。
そうなっても、山田が“主人公キャラ”になったかといえばそうではないのが本作の面白いところだ。山田は誰かを自然に惹きつけるスターがいること、自分がそういう存在でないことを痛いほど知っている。だから、できることを一生懸命にやる。 そんな山田を、杜若が評する場面はドラマチックだ。曰く、「自分の価値がわかってない」「価値ないもんと長年つるまんわ」。
山田は自分のことをよくわかっていると思っているが、身の丈なんて案外自分ではわからないものだったりするし、若いころの身の丈が自分の限界なんてこともない。そして、人が惹かれるのは、身の丈に合わせようとする人ではなく、身の丈を伸ばそうとあがく人なのだ。そして、そういうところをちゃんと見ている杜若のような人は意外といる。 『君は僕の太陽だ』は、他人の声が可視化され、誰かを見上げることが多い時代のヒーローを描く群像劇なのだ。 文=小林聖