みんな大好き?「世代論」で今年の新入社員を見てみると…「1日で辞めた」との声も、「新NISAタイプ」だそうだが
■ 「ゆとり」「さとり」…あなたは何世代? ちなみに、こうした「世代論」は、多くの人が好む話題だ。レッテルを貼ることに嫌悪感を抱く人もいるが、時代の特徴を捉えて考察するには都合の良い面もある。 これまでにもさまざまな「○○世代」があった。現在10~20代前半の「Z世代」の前は、1987~2004年生まれの「ゆとり世代」だ。詰め込み教育の反省から授業時間や教育内容を減らした「ゆとり教育」を受けている世代であることが由来。競争意識が低くプライベートを大切にする傾向にあるとされる。 また「ゆとり世代」の中には、特に「ミレニアル世代」「さとり世代」と呼ばれる世代もある。「ミレニアル世代」は、1981~1996年ごろに生まれ、幼い頃からインターネットに慣れ親しんでいる。「さとり世代」はゆとり世代の後半とされ、ゆとり教育が見直され始めた時期に学校に通った。不景気を通じて世の中の世知辛さを知り、無謀な冒険をせず安定を求める傾向にあるとされる。 さらに時代を遡ると、現在50歳代前半の1971~1974年生まれは「団塊ジュニア世代」と呼ばれる。この世代は「就職氷河期世代」とも呼ばれ、苛烈な受験戦争と就職氷河期を経験したことから、逆境に強いメンタルを持っているとの見方がある。 いわば、「ゆとり世代」とは正反対の資質を持つ。そのため、会社など組織の中では互いの価値観が衝突する場面も少なくない。昭和生まれと平成生まれのメンタリティーの違い、とも言えるかもしれない。 団塊ジュニアの前には、景気の良いバブル時代に就職した1965~1970年ごろに生まれた「バブル世代」がいる。羽振りのよい時代を経験したことから購買意欲が高く、コミュニケーション力が高いのが特徴とされる。バブルを経験したことなく、長いデフレ下で育った今の若者からは、なんともうらやましい世代に見えるかもしれない。
■ 世代論の始まりは「団塊世代」 こうした世代論の始まりは、作家・堺屋太一氏の近未来小説『団塊の世代』だった。堺屋氏は1947~1949年ごろに生まれた第1次ベビーブーマーを「団塊の世代」と名付け、この世代が高度経済成長を牽引していく日本の姿を描いてみせた。 団塊の世代は右肩上がりの経済成長を経験していることから、「努力は必ず報われる」という泥臭い考えを持っている人が多いと言われる。また人口が多いことから、競争心が強いのも特徴とされる。 ちなみに「バブル世代」と「団塊世代」の間には、何事にも無関心な「しらけ世代」や、個人主義でオタク気質の多い「新人類」と呼ばれる世代もいる。要するに、時代の雰囲気をうまく捉えたキーワードがバズると、世代を表す言葉として定着するわけだ。 ちなみに、「Z世代」の次は、「α(アルファ)世代」と呼ばれ始めている。「Z世代」よりもさらにスマートフォンやSNSなどが当たり前の中で育ったことが特徴だ。主に2010年以降に生まれた若者を指し、オーストラリアの世代研究者であるマーク・マクリンドルによって提唱されている。 もちろん、世代論で語られる特徴が、その世代のすべての人の特徴に当てはまるわけではないことは、言うまでもない。こうした世代論を鵜呑みにしてしまうと、一人ひとりの個性を無視してしまう危険性はある。 ただ、大雑把に各世代の特徴の違いを把握し、自らの価値観の背景にある時代性を客観視するには多少なりとも役に立つのではないだろうか。
杉原 健治