TPPで日本の食卓の安全は脅かされるの?
2010年3月から始まったTPP(環太平洋パートナーシップ協定)交渉が今年10月、大筋合意に至りました。参加国それぞれの国会で批准手続きが完了すれば、正式に発効となります。 TPPに伴う変化の中でも、私たちの生活に密着している内容の一つが「食の安全」です。かねてから「遺伝子組み換え作物などが輸入されるようになるのでは」、「生鮮食品の残留農薬が心配」という不安が広がりましたが、TPPによって私たちの食卓にどんな影響があるのでしょうか。懸念点と対策を見てみましょう。
TPPの影響で、日本は輸入食品増加が見込まれる
TPPによって、太平洋を囲む12の国では貿易や投資が活発になり、経済の発展が期待されています。参加国は、アメリカやカナダ、ペルー、メキシコ、チリ、ニュージーランド、オーストラリア、シンガポール、マレーシア、ベトナム、ブルネイ、そして日本です。各国のGDP(国内総生産)を合わせると世界全体の約4割を占め、世界最大規模の経済圏になります。 TPPの特徴の一つが、関税の撤廃や引き下げです。TPP発効により、日本が輸入している農林水産物2,328品目のうち、1,885品目で関税が撤廃されます。 協定発効後、即時撤廃される品目がある一方で、国産品と競合するなどの理由から年数をかけて撤廃されるものもあります。関税が撤廃されれば、輸入食品は値下がりする可能性が高く、消費者にとってTPPは経済的な恩恵をもたらしてくれるとみられています。
TPPに伴い、食品の安心・安全に影響は?
TPP交渉を巡り、消費者団体などは「米国から食品の輸入に基準緩和を求められ、食の安心や安全が脅かされるのではないか」といった懸念が指摘されていました。 これに対し、日本政府は「現行制度を変更する必要はないことで合意した」と説明しています。輸入食品の安全基準は、WTO(世界貿易機関)で決められている指針や基準を踏襲するため、食品の安全基準は各国に主権が認められ、制度を変更する必要がありません。つまり、日本で認められていない農薬や食品添加物を使った食品が輸入されることはないと主張しているのです。 また、食品表示のルールも現行制度が維持されます。遺伝子組み換え作物を使った食品に対する使用表示義務や、輸入オレンジやレモンなど、収穫後の農産物に散布されている防カビ剤や殺菌剤の表示もこれまでとまったく変わりません。