ぶいすぽっ!ならではの魅力が盛りだくさん 初の単独オフラインイベント現地レポート
バーチャルe-sportsプロジェクト・ぶいすぽっ!によるオフラインイベント『ぶいすぽっ!学園文化体育祭』が、2023年10月31日から11月5日までの6日間にわたって開催された。 【画像】まさかの盛況ぶりとなった「定点カメラ」 茨城県河内町にある廃校・旧金江津小学校を活用した「金江津小学校スタジオ」を会場にした本イベントは、ぶいすぽっ!にとって初となる単独でのオフラインイベント。今回、筆者は11月2日、会期3日目の現地に足を運んだ。現地の盛り上がりをここにレポートしよう。 ■『ぶいすぽっ!学園文化体育祭』の内容を振り返る 秋も深まる10月末から11月上旬にかけて開催された本イベントだが、「ぶいすぽっ!」がオフラインイベントを開催すること自体は二度目である。最初のオフラインイベントは、2022年8月11日から14日にかけて開催された「ぶいすぽっ!」×「神田明神納涼祭り」のコラボレーションイベントだった。 前回は台風の影響によって13日こそ中止となってしまったが、計3日間に渡って開催された同イベントは非常に活況であった。今回はそれに次ぐ2度目の開催、それもソロイベントということで、グループの成長を感じられる部分だ。 会場となった「金江津小学校スタジオ」は廃校となった小学校だった施設で、今回のテーマである「文化祭」と「体育祭」にピッタリのロケーションだ。さまざまな飲食店の出店や特別景品がゲットできる出し物のほか、校舎内ではメンバーと1対1でのトークイベントからフォトスポット、体育館での特別イベントまで盛りだくさんの内容となった。 注目を集めた催し物はいくつもあった。ひとつはイベントを訪れた来場者らが団体競技に挑戦し、団結して優勝を目指すという、体育祭を模した企画だ。綱引き/大縄跳び/玉入れといった運動会の定番競技を、なんと「イベント来場者同士で競争する」内容となっており、オフラインイベントにおける大規模な「リスナー参加型」の企画というのは非常に新鮮だったと思う。 その日初めて出会った者同士が、その瞬間力を合わせて勝とうと努力する流れは、ぶいすぽっ!が得意とするFPSゲームにとっては日常である。意外性のある企画ではあるが、ちょっとした気恥ずかしさを押し殺すように、一瞬のノリと思い切りの良さで競技に臨む参加者たちの姿が印象的だった。 また筆者が取材をした3日目、企画の1戦目となった「玉入れ」には、ぶいすぽっ!メンバーとも親しいREJECT所属のストリーマー・MOTHER3が急遽参加することに。当日訪れていた参加者もこれには驚いただろう。 MOTHER3はぶいすぽっ!メンバー・八雲べにとの配信番組『まざべにのミッドナイトダブルピーク』の収録で現地を訪れていたようで、後日この日の模様が放送されるとのことだ。 校内にもさまざまなブースが用意されており、本イベントのために制作された応援服の試着・記念撮影ブースや、これまでの活動の中で印象的な配信や瞬間をとらえた画像を使ったモザイクアート、飲食をしながら他参加者との交流を楽しめる交流スペースなどがあった。 くわえて、教室・廊下・昇降口などいたるところに本イベントを彩る装飾がほどこされており、“これぞ文化祭!”と頷きたくなるような強い手作り感で会場を彩っていたのが印象深かった。 体育館でのイベントでは「校内放送」をイメージしたラジオ企画が催され、ふつおたコーナー/いまだから言えちゃう3Dアイキャッチの真相など裏話も交えたメンバーの会話を楽しむことができた。 筆者が参加した3日目では、小森めと・英リサ・兎咲ミミ、紫宮るな・如月れん・花芽すみれといった組み合わせが会場を盛り上げていた。 なかでも記憶に残っているのは、英リサのトーク。この放送の収録を迎えたのが、第6回『CRカップ VALORANT』で8連敗に終わってしまった直後だったことを打ち明け、リスナーからの「挫折したときにどう立ち直るか?」という質問に対して熱心に聞き出していたのがとても印象的だった。 校内放送イベント最後には歌唱パートがあったが、そちらで印象的だったのは小森めと&小雀とと。「アイドル」「ファンサ」といったポジティブかつポップなナンバーを歌い踊る小森と、Kanaria「デーモンロード」を伸びやかな歌声で難なく歌ってみせた小雀らのパフォーマンスには驚かされた。 ■ぶいすぽっ!人気の秘訣は“ゆるく結びつきあう連帯感”? 本イベントが醸し出していたムードを一言であらわすと、“ゆるくのどかな雰囲気”だったといえる。 こうした雰囲気が生まれた理由として、開催地が茨城県・金江津小学校スタジオだったことは大きいだろう。この会場は田畑や山林に囲まれた場所にあり、誤解を恐れずにいえばイベント参加者たちは田舎の空気のなかで楽しむことになった。 日中の陽が昇った11時ごろはまだしも、イベント終了時刻が近づくにつれすっかり日が落ちてしまい、辺りは真っ暗。気温もかなり下がっており、思わず「寒い」とこぼしてしまうほど。 とはいえ、前回の神田明神に引き続き屋外でおこなわれたぶいすぽっ!オフラインイベント。展示場やイベントホールとは少し趣の異なる会場では育まれる空気も違ううえに、会期中の6日間は記録的な暖かさを計測したこともあって、本イベントはほんわかとした暖かな空気感が自然と生まれていたように感じる。 くわえて本イベントは事前にチケット購入が必要だったこともあり、会場にいるのはもちろんぶいすぽっ!ファンのリスナーたち。会場付近の売り場で購入したグッズや持参したグッズなど、イベント参加者のほとんどが思い思いのグッズを身につけており、参加者はかなりの熱気を感じた。 そんなムードをイベントの外側へと知らせ、楽しげな雰囲気を伝えていたのが初日から最終日まで行なわれていた定点カメラでの配信である。 カメラに手を振ってアピールする者、購入したグッズを見せる者、あるいは一発芸のようなアドリブを見せる者など、配信には多くのファンが映り込んでいた。 さらに、現地の来場者と配信を視聴するリスナー同士の交流を生む接点となっていたことも面白い。会期2日目からは定点カメラが合計3箇所に増設され、コメント欄が見れるようにモニターも配置、会場参加者と配信視聴者でのコミュニケーションが可能となったのだ。それだけでなく、ぶいすぽっ!メンバーらが定点カメラ配信を覗いてコメントを送ることもしばしばあり、彼女らに向けてグッズをアピールする場としても大いに盛り上がった。 空澄セナは「定点カメラ良いね。今後のリアイベでもずっと実装して欲しい。暇な時間があればずっと見ていた」と後日の雑談配信で語っており、ほかのメンバーたちからもかなり支持されていた。おそらく当初想定されていなかった盛り上がりであり、本イベントの盛り上げに一役買った意外なピースであっただろう。 ぶいすぽっ!メンバーといえば、配信中に配信用ボイスチャットへほかのメンバーが参加する光景ががままみられる。 間違えて入ってしまったとしても、即座に抜けるなどして配信の邪魔にならないようにすることがほとんどであるが、その点、ぶいすぽっ!のメンバーはわりあいカジュアルかつ大らかに対応する。『Apex Legends』『VALORANT』『Minecraft』などのボイスチャットを使っての配信中にポロンと入り、ゲームには参加することなく会話に混ざってワイワイと盛りあがっていくのだ。 目が覚めたばかりのメンバーがボイスチャットに入り、普段の配信とはまた違った声で会話しはじめたり、ボイスチャットに入って一切声をあげないメンバーもいる。「なぜボイスチャットに入ったのか?」と問われて、「なんか人がたくさんいるから来た」と返事をするメンバーもいるほどだ。 こうしたぶいすぽっ!メンバー間の文化について、「配信をしているメンバーの邪魔になってしまうのではないか」と、あまりいい顔をしない視聴者がいても不思議ではない。 しかし、現在のぶいすぽっ!リスナーからは、そういった不満の声はほとんど上がっていないように感じられる。むしろ「あ、○○さんも来たんだ!」と、和気あいあいとしたムードでおしゃべりを楽しみながらゲームをする彼女らを見て楽しむ層が、ファンの大多数を占めているのではないだろうか。 それはまるで同じグループに属するゲーマー同士が休みの日になんとなくボイスチャットに集まる、そんなどこのコミュニティにもあるような雰囲気と近く、ゲームを楽しむリスナーにとって馴染みのある光景/空気だ。 そんな“ゆるく結びつきあう連帯感”を感じさせつつ、大会や企画に臨む際の「ここぞ」という瞬間では集中し、好成績を収めたり、時には本気でぶつかり合う姿を見せてくれる。“ゆるくてのどかなイメージ/雰囲気”から“一致協力してスクラムを組む”。このオンオフの切り替えにこそ、彼女らぶいすぽっ!の人気・魅力の秘訣が詰まっている。 そして、本イベントは会場ののどかな雰囲気、運動競技での団結、リスナー同士が交流できる定点カメラなど、視聴者にもスポットを当てる構成でぶいすぽっ!らしさを「体感できるイベント」としてうまく作り上げられていたのだ。 演者と参加リスナーとが集まり、お互いに結びつきあってゆるく楽しめるオフラインイベントならではの魅力が詰まった本イベントは大成功だったといえるだろう。そして、そんなぶいすぽっ!の次なるイベント『ぶいすぽっ!年末カウントダウン2023』が年末年始に開催される。場所は東京・秋葉原ということで、こちらもまた注目を集めるはずだ。
草野虹