ポール・キング監督、主演ティモシー・シャラメに「驚き」

　名作『チャーリーとチョコレート工場』の工場長ウィリー・ウォンカが、いかにしてあの不思議な工場を作ったのか。若きウィリー・ウォンカの“夢の始まり”を描く注目作『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』が12月8日より全国公開。ロアルト・ダールの原作からインスパイアされたオリジナルストーリーを見事に映像化したポール・キング監督に“魔法のチョコレート”の秘密を聞いた。 【場面写真】ウォンカが夢を叶えるために訪れた街は… 　幼いころから母と一緒においしいチョコレート店を作ることを夢見ていたウィリー・ウォンカは亡き母との夢を叶えるため、一流のチョコレート店が集まる街へとやってきた。ウォンカの“魔法のチョコレート”はたちまち人々を魅了するが、彼の才能を妬んだ“チョコレート組合3人組”に目をつけられてしまう。なんとそこは“夢見ること”が禁じられた街だったのだ…！ 　まっすぐに夢を追う純粋無垢な若きウォンカを『君の名前で僕を呼んで』（2017年）でブレイクし、世界中から人気を集める俳優ティモシー・シャラメが演じる話題作。本作ではミュージカルシーンでの歌声も大きな注目を集めているティモシーをキング監督も絶賛する。 「ティモシーは本当に素晴らしくて、驚かされることばかりだった。同世代で活躍している役者の中ではトップの1人だと思う。本作では歌にダンスにと、これまで見せなかった一面を見せてくれて、ミュージカルの技量に加えて、若きウィリー・ウォンカを体現するという難しい演技を見事にやってのけてくれた。劇中で『ピュア・イマジネーション』を歌ったときは僕も見ていてハートがとろけてしまったよ（笑）」 　繊細な演技で知られるティモシーが、歌って踊ってコミカルな表情を見せるだけではない。監督も大のお気に入りというキャラクター“ウンパルンパ”を演じるのはイギリスを代表する俳優ヒュー・グラント。CGで見事に“オレンジ色の小さな紳士”になりきっている。 「実際にヒューをオレンジ色に塗ったりしてないから大丈夫だよ（笑）。たぶんヒューも自分のウンパルンパ姿をすごく気に入ってくれたはず。…あれ、そういえば最近ヒューから連絡無いな（笑）」 　ヒュー以外にも、ウィリーの母親役に『シェイプ・オブ・ウォーター』（2017）のサリー・ホーキンス、意地悪でがめつい宿屋の女主人役に『女王陛下のお気に入り』（2018）でアカデミー賞主演女優賞を受賞したオリビア・コールマン、ワケあり神父役にローワン・アトキンソンといった名優たちが独特すぎる役どころを喜々として演じているのも必見だ。 「今回は本当に素晴らしい俳優たちがこぞって参加してくれて、僕は駄菓子屋の中にいるような気分で演出していたよ。また皆さん、コメディーセンスが素晴らしいんだよね。今回、サイモン・ファーナビーと一緒に脚本を書いたんですが、サイモン自身も俳優なものだから、2人で本読みをしたときは大笑いしてしまって。俳優たちがこんなに面白く演じてくれるか不安になったんだけど、さらにレベルを引き上げてくれて言うこと無しだったよ」 　豪華な役者陣もさることながら、この映画の見どころと言えば、やはりチョコレート。 「劇中に登場するチョコレートは僕も一通り食べたよ。どれも本当においしかったけど、雲の形をしたチョコレートは中にパッションフルーツとマンゴーのフィリングが入っていて、あれは本当においしかった。今回、ガブリエル・グーニョさんという本職のショコラティエが参加してくれているんだけど、まさにウォンカのような天才だね（笑）」 　あくどい女主人に騙されたウィリーは同じ境遇の少女ヌードルと知り合い、魔法のチョコレートで勇気づけていく。見るからに不思議でおいしそうなチョコレートに、思わずスクリーンに向かって手を伸ばしてしまいそう。 「“ホバーチョコ”というチョコレートは1個作るのに4時間かかった。ガブリエルには、それをいくつも作ってもらったんだ…1つひとつ精巧に（笑）。他にも、ウィリーがチョコレートショップを開店するシーンで、ウィリーとヌードルがティーカップで乾杯するシーンがあるんだけど、ジーン・ワイルダー版（『夢のチョコレート工場 』1971年）だと食べられるティーカップになっているんだ。事前に準備できなかったんだけどどうしてもあれをやりたいと思って、現場でガブリエルに“今から作れない？”って聞いたんだ。彼女が“時間はあとどれくらいあるの？”って聞くから“1時間くらいかな”って答えたんだけど、見事に本物さながらの装飾が施されたチョコレートのティーカップを作ってくれたんだ。本当にすごかったよ」 　目を輝かせるキング監督。きっと映画館ではチョコレート好きの子どもたち、大人たちがその何倍も目を輝かせるはず。 （TOKYO HEADLINE・秋吉布由子）