米国の畜産動物保護区、インフレと寄付減のダブルパンチ 閉鎖なら殺処分も
米ニューヨーク州のアニマルサンクチュアリー(畜産動物保護区)が実施した非公式調査によると、インフレによる費用の上昇と寄付金の減少が、全米の保護区を圧迫していることが分かった。調査対象となった45の保護区のうち、パンデミック以降に費用が2倍になったと答えた割合は3分の1以上に達した。調査を行った団体は、保護区閉鎖が続けば多くの畜産動物が餓死するか、処分されるとの懸念を示した。 全米の畜産動物保護区を、インフレと寄付金の減少が圧迫していることが最近の調査で判明した。 ニューヨーク州のキャッツキル保護区が、45の保護区について調査。1つを除いた全てで、パンデミック以降、干草や穀物など必需品の価格が上昇していると回答。費用が2倍になったと答えた保護区は3分の1以上に達した。 キャッツキル保護区には、ニワトリや七面鳥、18頭のウシ、35歳の盲目のウマまで200頭が保護されている。 保護区の創設者、キャシー・スティーブンス氏 「コストの上昇は天井知らずだ。干草や穀物、医療費など最も必要な費用が高騰している。徐々にではなく10%、20%……50%と上がっている。一方で、寄付金は減っている。10ドルなどささやかな寄付から毎年の多額の慈善寄付まで、さまざまなレベルの寄付だ」 同氏によれば保護区の動物の多くは、畜産業界から保護された。食肉処理場行きのトラックや、閉業になった農場から逃れてきたり、さまよっていた町で発見されたり、他の保護区から移ってきた動物もいる。 「このまま保護区閉鎖が続けば、多くの動物たちが死んでいく。すでに始まっている。もっと厳しいシナリオでは、当局の介入が必要になった場合、畜産動物はおそらく処分に回される。900キログラム以上もあるウシに行き場はなく、おそらく処分される」 米国の物価上昇率は、22年6月の9.1%をピークに鈍化してきたが、ここ数カ月、上昇率鈍化の程度は小さくなっている。3月の消費者物価指数は前年比で3.5%上昇に加速した。 スティーブンス氏は、2023年の費用増と寄付金減少を受け、予算を大幅に削減したと語った。 キャッツキルの調査によると、3分の1の保護区が、存続が危ぶまれると回答したという。