強行日程で外交デビューの石破首相「継続性」重視 大きかった出席の意義
石破茂首相は11日、ラオスでの2日間の外交日程を終え、政府専用機で帰国の途に就いた。首相として初めての外遊では外交の継続性を重視し、日本の存在感を示すことを目指した。 【写真】東アジアサミットに臨む石破茂首相 ■外交方針の不変を強調 「世界中のどこであれ、力や威圧による一方的な現状変更の試みを許容してはならない」 首相は11日、東南アジア諸国連合（ASEAN）や日米中露などが参加した「東アジアサミット（EAS）」でこう述べた。歴代首相と同様に、法の支配などに基づく「自由で開かれたインド太平洋」（FOIP）構想のASEAN版である「インド太平洋に関するASEANアウトルック（AOIP）」を支持する考えも示した。 首相の発言は、東・南シナ海で覇権主義的行動を強める中国を念頭に置いたものだ。だが、外交デビュー前には、持論のアジア版NATO（北大西洋条約機構）構想が、従来の日本の外交・安全保障の路線をはみ出すものとして波紋を広げた。伝統的に日米中との間でのバランスに腐心するASEAN諸国では、中国を刺激しかねないとして「ASEANは構想を受け入れないだろう」（インドネシア英字紙ジャカルタ・ポスト）と報じられた。 こうしたこともあり、首相は今回の外遊で、日本外交の方針が不変であることを示す発言を繰り返した。持論を封印したのも同じ文脈上にある。 ■欠席なら間違ったメッセージに 首相がこうした姿勢を会議に出席した中国の李強首相らを前に示すことができたのは、現地に赴いたからこそだった。しかし、首相の交代で政治日程が不透明になり、外務省幹部も一時は、新首相のASEAN関連首脳会議への出席を不安視した。国会日程や衆院選を優先させる判断もあり得たためだ。 だが首相は、首相就任前のNHK番組で「中国が来たとして、みんな仕切られちゃったら、たまらんよね」と述べ、出席する考えを表明。9日に衆院を解散した後、10日零時に羽田空港を出発し、同日未明にビエンチャンに到着する強行軍で、初の対面首脳外交に臨んだ。 首相同行筋は、バイデン米大統領が今年もASEAN関連首脳会議に出席しなかったことを念頭に「日米の首脳が欠席すれば間違ったメッセージを送ってしまう。首相の出席は、日本外交にとっても自由主義陣営にとっても大きい」と語った。（原川貴郎）
