スコッティ・シェフラーのメンタルコントロールはキャディがやっていた!?【佐藤信人アイズ】
ツアー解説でおなじみの佐藤信人プロ。今回は前回に続いて、パリ五輪で金メダルを獲得し、PGAツアーでは年間王者に輝いたスコッティ・シェフラーについて語ってもらった。 スコッティ・シェフラーのドライバーショット正面連続写真
考えてみれば、テキサス大時代は、チームメイトのボー・ホスラーがナンバー1の選手で、シェフラーは2番手でした。それが今やこの強さ。きっちり力を出して勝ち切るという今年の勝ちパターンを見ても、強さに死角なし、といった感じです。 多くの人はタイガーと比べられるレベルになっていると感じているのではないでしょうか。 やはり、信仰心からくる価値観が同じ家族やサポートスタッフの存在こそがシェフラーの一番の強さの特徴でもあると感じます。 5月の全米プロは、父となって最初の試合でした。その1ホール目、167ヤードをぶち込んでのイーグル発進は前号でも話したとおり。出産に立ち会ったシェフラーは「心からメレディス(夫人)を誇りに思った」と。この思いを、イーグルという形で表現したのかもしれません。 そして2日目の”逮捕劇”後のラウンドは「66」で回るも、3日目、キャディのテッド・スコットが娘の卒業式のためバッグを担げなかった途端に「73」とスコアを崩し失速……。しかし最終日にテッドがキャディに戻ると「66」をマークし優勝8位で終えました。 パリ五輪でも、最終日のバックナインまでシェフラーの流れではなかったのに、なんだかんだ我慢してつなぎ、最後の9ホールで「29」をたたき出し金メダルです。肝心なところでドーンとビッグスコアを出す。これこそ王者の試合運びです。 2日目途中からテッドにラインを読んでもらっていたそうですが、なかなか入らず、最終バック9になって入り始め、すべてがかみ合った感じです。実はシェフラーはときどき怒りを抑えられなくなり、かなり激しく感情をあらわにするほうです。 インタビューなどを聞いていると、自己評価は「よいショットやパットができたかどうか」にはなく、「自分の感情をコントロールできたかどうか」がほとんど。それだけゴルフは安定していることが多いとも言えますし、ゴルフはミスが当たり前でそれに対して自分がどうリアクションするかのほうが大事だと考えているのでしょう。 実際、プレーオフシリーズ第2戦のBMW選手権では、見たこともない尋常ではない怒り方をしていました。標高が高く飛距離が計算しにくい、またグリーンも硬かったり軟らかかったり……難コースにいら立ち、さらには年間王者のプレッシャーもあったでしょう。「Why?」と叫ぶ場面も……。 そんなとき感情のコントロールをしているのがキャディのテッド。元々バイブルスタディという聖書の勉強会に参加していたという間柄。宗教を通じた強い絆があるのでしょうが、改めてキャディとの相性の重要性、キャディの役割の大きさを感じます。 そして、シェフラーにとってナンバー1の存在である奥さんと家族。年間王者の表彰式でもまったく変わらない感じの笑顔で写真に収まっていましたが、この"チーム"の空気感こそが、シェフラーの強さの原動力だと思います。 シェフラーの活躍は、ケガや奥さんや家族に何かがない限り、来シーズンも続きそうですね。 ※週刊ゴルフダイジェスト2024年10月1日号「さとうの目」より
週刊ゴルフダイジェスト