『ビートルジュース ビートルジュース』苦戦 要因は配信時代に失われつつある文脈?
9月最終週の動員ランキングは、『ラストマイル』が週末3日間の動員が14万1000人、興収が2億1300万円で1位。同作がトップを飾るのは公開6週目にしてこれが5週目。公開から38日間の累計成績は動員338万9400人、興収48億4500万円。同じ東宝配給の『スオミの話をしよう』や、初登場6位の『傲慢と善良』、初登場7位の『Cloud クラウド』といった他の国内実写作品が伸び悩む中、好調を維持している。 【写真】『ビートルジュース ビートルジュース』場面カット(多数あり) 初登場作品では最高位となる4位につけたのは『ビートルジュース ビートルジュース』。同作はティム・バートン監督にとって出世作となった36年前のホラーコメディ『ビートルジュース』の続編となるが、オープニング3日間の動員は9万1000人、興収は1億3990万円と、なかなか厳しい出足となった。 もっとも、1988年に公開された前作『ビートルジュース』も、日本での配給収入4億円(興行収入換算で約6.5億円)と、今とは比べものにならないほど吸引力のあった当時のメジャー配給の外国映画としては、かなり低調に終わった作品。日本でのティム・バートン監督の知名度は次作の『バットマン』(1989年)で飛躍的に上がり、それに続く『シザーハンズ』(1990年)で映画ファンの間での人気が決定的となった。 そんなティム・バートン監督も、10年前の『ビッグ・アイズ』あたりから北米でも日本でも人気が下降気味で、期待されていたディズニークラシックのリメイク『ダンボ』(2019年)が興行的にも批評的にも大失敗に終わったことで、人気映画監督としての輝かしいキャリアに暗雲が垂れ込めていた。そんなティム・バートンにとって起死回生の復活作となったのが、『ビートルジュース』と同様、彼が最も得意とするジャンルであるホラーコメディのテレビシリーズ、Netflixでの『ウェンズデー』(2022年)だった。 9月6日に北米公開された『ビートルジュース ビートルジュース』は、現在までに北米だけで2億5000万ドル以上の興収をあげていて、今週末にも『インサイド・ヘッド2』、『デッドプール&ウルヴァリン』、『怪盗グルーのミニオン超変身』、『デューン 砂の惑星PART2』に続いて2024年の年間興収ランキングトップ5に入る見込みの大ヒットを記録している。 今回の『ビートルジュース ビートルジュース』の日本での苦戦の要因は、前作の人気や知名度の差だけでなく、「『ウェンズデー』で大復活したティム・バートンの新作」というその文脈が作品宣伝においてほとんど共有されていなかったことにもあるのではないか。ちなみに、『ウェンズデー』は日本のNetflixの視聴者の間でも人気を集めていた。配信プラットフォームでの視聴と映画館に足を運ぶという行動が、日本ではあまり結びついていない。そこに大きな課題があるように思う。 ※記事初出時、本文に誤りがありました。以下訂正の上、お詫び申し上げます。(リアルサウンド編集部、2024年10月4日18:48) 誤:『シザーハンズ』(2000年) 正:『シザーハンズ』(1990年)
宇野維正