「やらない理由ばかり考えるな」!…起業家教育のプロが語る「プランの立て方」に東大生も驚愕
近年注目が集まっているアントレプレナーシップ。「起業家精神」と訳され、高い創造意欲とリスクを恐れぬ姿勢を特徴とするこの考え方は、起業を志す人々のみならず、刻一刻と変化する現代社会を生きるすべてのビジネスパーソンにとって有益な道標である。 【漫画】頑張っても結果が出ない…「仕事のできない残念な人」が陥るNG習慣 本連載では、米国の起業家教育ナンバーワン大学で現在も教鞭をとる著者が思考と経験を綴った『バブソン大学で教えている世界一のアントレプレナーシップ』(山川恭弘著)より抜粋して、ビジネスパーソンに”必携”の思考法をお届けする。 『バブソン大学で教えている世界一のアントレプレナーシップ』連載第17回 『賞味期限はたった72時間...起業家教育の名門大学が教える「ビジネスアイデアを腐らせない」ための鉄則』より続く
半年間の「年間プラン」
これは知人から聞いた実例です。 ある大企業で年間のマーケティングプランを策定していたというのですが、その会社の決算期は3月。にもかかわらず、年間プランができたのが、8月だったというのです。その翌年のプランではありません。当期の半分近くが過ぎようとするタイミングで、ようやく年間プランが決まった。 それを受けて行動する広告代理店はまず何をしたかというと「残り半年でできること」を洗い出します。年間プランの中には「もうとっくに過ぎている、5月の行動予定」が含まれているのですから、そうなるのは当たり前です。なんと、残り半年、「今年のプランを実現できなかった理由(いいわけ)づくり」に費やしたというのです。
「やらない言い訳」も一流な東大生
オブザーバーとしてそのプラン策定会議に参加していた知人は、「とにかく、メンバーのほとんどが、完璧なプランを作ろうと躍起になっていた」といいます。 「このままでは、今年、有効な活動ができなくなる。まず、全体計画は未定でも、動くべきところは動くべきだ」と進言しても「それで失敗したら誰が責任を取るのか」と、聞き入れられなかったそうです。 さらに、でき上がったプランのほとんどは「前年の踏襲」だったというから、笑うに笑えません。 私は年に数回、日本に帰国しますが、帰国時に日本の大学で短期講座を開催することが結構あります。以前、東大で集中講義をしたあと、受講生がこう言うのです。 「先生、我々はやらない理由を研ぎ澄ますことに長けてきた。やらない理由を語らせれば、どんなことであれ、誰にも負けないと思う。なんて厄介な教育だったんだろう、習慣だったんだろう」 必要以上に失敗を恐れて、慎重になって、そして「やらない」。賢くて、勉強ができるタイプが陥りがちな、罠です。何もしなかったから、失点はない。減点法で考えるとこうなってしまいます。でも、加点もない。 これらは極端な話ですが、新規事業を始める際、事業計画を立てるのに時間がかかり過ぎて市場環境が変化してしまっていたという話は珍しくもありません。「先行事例がない」「先行投資を回収する目途が立たない」「必要な人材が集まる保証がない」など、どんなプランでも、不安材料はあります。 その不安=リスクを最小限にすることは重要ですが、それはゼロにはなりません。ゼロにならないことを理由に「やらない方向」に思考が向いていってしまいがちなのです。 『マイケルジャクソンのDVDを”意外なところで”販売し大ヒット…天才経営者の驚異的な「マーケティング戦術」』へ続く
山川 恭弘