『マウンテンドクター』大森南朋がひた隠す死の真相 受け継がれる医療ドラマの系譜
菜月（舟木幸）と江森（大森南朋）が共有した“秘密”
刻一刻、命が失われていく瞬間にあって、菜月と江森は秘密を共有する。それは亘のためでもあった。医師である江森はそれをよしとせず、救えなかった自身の十字架として背負おうとしたのではないか。あたかもその姿は自らを罰するかのようだ。もし亘が口を開かなければ、江森が裁判で真実を語ったかは判然としない。 山岳エリアを舞台に山岳医の歩（杉野遥亮）たちの活躍を描く『マウンテンドクター』は、救命救急を主題とする医療ドラマの系譜に連なる。「命を救う人間＝ヒーロー」という図式は、今作にも当てはまる。危険な災害現場からの避難、搬送された患者に対する的確な処置、高難度の手術などいくつも見せ場がある中で、病原菌によるツツガムシ病を特定し、副作用を考慮して適切な薬剤を投与する場面は、緊迫感のある映像とセリフによって第3話のクライマックスとなっていた。 山への復讐を誓う江森には、まだ私たちが知らない過去がある。なぜ人は山に登るのかという問いが、命を前にしたとき深遠な響きを帯びて迫ってくることを私たちは知っている。
石河コウヘイ
