親に圧力となる「愛情かければ素直な子に育つ」 発達障害の子を持つ親は自分を追い詰めてしまう
発達障害の子を持つ親御さんは、知らず知らずのうちに気を張り、自分を追い詰めてしまいます。「自閉スペクトラム症」の診断を受けた3人のお子さんを持つ外科医ちっちさんの著書『発達障害の子を持つ親の心が楽になる本』より、今の生活が少しでも楽になり、親御さんが上手に子どもと接することができるようになるコツを紹介します。 ■何ひとつ思い通りにいかない 「愛情を持って育てれば、素直で賢い子に育つ」「子どもは育てたように育つ」。そんなふうに考えていた時期が私たちにもありました。ところが、1人目の長女が生まれ、子育てが始まって驚きました。
生まれたばかりの長女は、ものすごく神経質な子で、ちょっとでも気になるものがあるとなかなか寝ません。やっと寝たと思ったら、ちょっとした物音で起きてしまいます。 「新生児だし、新しい世界には不慣れだよな……」と思い、一度は納得しました。よく眠れるように寝具や服を見直し、お腹が空いた時間が少なくなるように授乳の間隔や量を考え、よく眠れると評判のスイングを買い、なるべく環境を整えました。 しかし、そんな試行錯誤をしても何ひとつうまくいかず、2~3時間おきに長女に対応する生活が続きました。妻は、まとまった睡眠をとれない状況が、1年半は続きました。
■「できることをやっていく」ことにした 「努力しても必ずしもうまくいくわけではない」と柔軟に考えました。「うまくいかなくても、親なのだから、子どものためにできることを見つけて実行すればいい」と割り切ったのです。「子を変えるための努力」ではなく「今の親2人が、子に対してできることをやっていく」と開き直ることにしたのです。 例1)「まだ、寝ない?」 「なら、ごみ捨てに行こう!」と、一緒にごみステーションまで行きました。なぜ、ごみ捨てなのか? 親が寝るまでにやりたいことだったからです。
寝かしつけがうまくいかず、子どもにイライラするのは、まだやらなければいけないことが親側に残っているときだからです。子どもが寝やすいように介入した上で、それでも寝ないのであれば、開き直って親側のタスクをこなすようにしました。 例2)「食事を食べない?」 「なら、ラップして置いておこう」と考えました。明日も食べなかったら捨てればいいのです。食事で大切なのは、栄養のバランスですが、1食で栄養のバランスをクリアする必要はありません。1食が偏るのであれば、数日から数週間かけて全体で栄養のバランスをとればいいのです。