大経大で上場企業が株主総会 学生ら見学「生きた教材」に
株主総会が大学施設で開催されるのは珍しい
大阪市東淀川区の大阪経済大学でこのほど、東証1部上場の国際物流会社エーアイテイー(大阪市中央区)の定時株主総会が開催され、学生たちが受付対応などの運営に参加したほか、会場内で株主総会を見学した。企業の最高意思決定機関である株主総会が大学施設で開催されるのは珍しく、学生たちには貴重な生きた教材になったようだ。
社長がOBの縁 学生が受付担当し一部始終を見学
株主総会は大経大のA館70周年記念館フレアホールで開かれた。異例の大学施設内での開催は、同社の矢倉英一社長が大経大OBであることが縁となり、実現した。経営学部3年の4人が前日の会場準備や当日の受付業務をサポートしたほか、30人の学生が会場内で総会を見学した。 受付では経大生たちがやや緊張した面持ちで株主の応対に追われた。総会冒頭、矢倉社長が「社会貢献活動の一環として、大学で株式総会を開き、学生たちの参加や見学を認めた。学生たちには生きた企業経営を学ぶ機会になるだろう」と報告し、株主に理解を求めた。 事前登録をしていた学生たちが、株主席とは別に設けられ学生席で見学。傍聴だけで、質問はできない。同社の近年の業績は堅調ながら、経営戦略に関する質疑応答では、大学の知的な雰囲気に刺激されたためか、株主から例年よりも多くの質問が相次いだ。学生たちは株主と経営陣との質疑応答などを最後まで見守った。
「将来の会計担当に備えて総会を見ておきたかった」
総会終了後、矢倉社長は「入社試験の面接などで学生たちと接した際、勉強のための勉強に終始し、足が地に着いていないもどかしさを感じていた」と振り返り、「株主総会の体験を生かして、社会に出てすぐに役立つ勉強を心掛けてほしい」と、実践型人材への成長に期待感をにじませた。 受付などを担当した藤本梨央さんは「会計業務に関心がある。将来、貸借対照表など会計書類を作成する立場になった場合、最終的には株主総会で発表されるので、総会を体験しておきたいと思い参加した」と話す。「ROE(株主資本利益率)など、講義で習う専門用語が総会で実際にやりとりされたので、より理解が深まった」と、経営最前線の臨場感を体感したようだった。 学生たちを株主総会に送り込んだ池島真策教授は「学生たちは目の前の商品サービスに目をとらわれがちだが、経営を知るにはもっと大きな視野が必要だ。経営陣と株主のやりとりを通じて、企業経営の生きた一面を見てくれたのではないか」と手応えを語った。 日本企業を取り巻く経営環境が不透明な中、同社の株主総会は、不祥事発生の抑止力となる社外役員の権限と活用手法、今後の成長と安定を見据えた投資バランス、女性や外国人社員の幹部抜擢・役員登用など、業種業態の違いを越えて企業経営の現場で論議を呼ぶ重要課題が、ひと通り提示される濃密な展開となった。見学した学生たちには勉強になったことだろう。 (文責・岡村雅之/関西ライター名鑑)