『ユニコーンオーバーロード』は、SRPGの歴代作品に負けない注目作! 刺激的な“時短”バトル、なのに時間泥棒で止められない【プレイレポ】
北欧神話を題材とした群像劇と幻想的なグラフィックで魅了した『オーディンスフィア』や、戦いの緊張感とスピーディな爽快感を併せ持つ『朧村正』、骨太なベルトスクロールアクション『ドラゴンズクラウン』など、独自色の強い作品でその名を轟かせてきた「ヴァニラウェア」。近年では、少年少女の葛藤や成長を軸に、時代を超える壮大な物語を描いた『十三機兵防衛圏』がミリオンヒットを記録し、大きな話題となりました。 【画像】時短バトルなのに時間泥棒!刺さる人にはとことん刺さる『ユニコーンオーバーロード』。 同社は時間をかけて作り込む傾向にあり、その完成度の高さと引き換えに、作品を乱発することはありません。だからこそリリースされた暁には、多くのユーザーが大きな期待と関心を傾けます。 そんなヴァニラウェアが開発した最新作『ユニコーンオーバーロード』も、ファンから熱い注目を集めました。ですが本作が発売されたタイミングは、1ユーザーの勝手な視点で語らせてもらうならば、良好とは言えない状況だったように思います。 ■大作揃いの2月・3月ラッシュの中、確かな実績を叩き出す 『ユニコーンオーバーロード』は3月8日に発売されましたが、それに先駆けること約1週間前に『ファイナルファンタジーVII リバース』が登場。また、約2週間後の3月22日には『Rise of the Ronin』と『ドラゴンズドグマ 2』が発売を迎えています。 ジャンルこそ違いますが、本作も含めていずれもボリュームがあり、プレイ時間がたっぷりかかる注目作ばかり。手ごわいライバルに囲まれ、苦戦は避けられない……筆者はそんな風に考えていました。 ですが、数々の大作を相手にした『ユニコーンオーバーロード』は、全世界累計販売本数50万本を突破。発売から約3週間でこの記録は、見事というほかありません。 本作は、ファンタジー世界を舞台とした、大規模な戦いを描くシミュレーションRPG。根強い人気を誇るジャンルですが、人気ジャンルのアクションRPGあたりと比べると、人を選ぶ向きがあるのは否定できません。 強力なライバルが多く、またジャンルもややコア寄りだった『ユニコーンオーバーロード』は、しかし筆者の不安など軽く跳ね除ける大ヒットを叩き出しました。これほどの支持を集めた、本作の強みとはなんなのか。実際のプレイ体験を通じて、『ユニコーンオーバーロード』の魅力や特徴に迫ります。 ■ステージ攻略が重くなりがちな、SRPGの定番をひっくり返す! 『ユニコーンオーバーロード』は、戦闘だけに絞っても数多くのシステムが重なり合い、重厚で奥深いゲームシステムを構築しています。その全てを網羅すると、膨大な文章量になってしまうため、今回はゲーム面における大きな特徴に絞ってお伝えします。 一般的なシミュレーションRPGは、ステージごとに戦いを区切り、1ステージのクリアには数十分程度の時間を要するのがポピュラーなケースでしょう。戦場の状況は徐々に変化し、大きな流れの中で勝機を見つけ、戦略を駆使して大規模な戦闘を制する。そのため、「腰を据えて楽しむジャンル」と捉えている人も多いかと思います。 ですが『ユニコーンオーバーロード』の場合、短いステージならクリア時間の表記はわずか数十秒(ポーズ中や戦闘時の時間はおそらく含まれていませんが)。大規模の戦闘になれば比例してクリアまでの時間は伸びるものの、他の名高いSRPG作品と比べると、戦闘にかかる時間の感覚は短距離走の如くです。 本作のステージ攻略にかかる時間が短いのは、特徴的なシステムの数々にあります。まず、複数のキャラクターを編成した「部隊」(ユニット)の移動は全てリアルタイム。指示すれば自動的に移動するので、SRPGにありがちな「マス目を自分で移動させる」手間がありません。 とはいえ、リアルタイムで移動する作品は、『伝説のオウガバトル』をはじめいくつもあります。しかし、『ユニコーンオーバーロード』がユニークな点はここから。敵味方の部隊が接触すると戦闘が発生しますが、バトルも全てオートで進行するので、部隊同士の戦いもスピーディに決着します。 指示した後は、時間の経過と共に目的地へと移動。その道中や移動先で戦闘が発生しても、プレイヤーが操作する必要はなく、オートバトルで勝敗が決定。戦闘シーンをスキップすれば更に短縮。このテンポの良さは、SRPGに“時短”をもたらす刺激的な提案でした。 ■クラスの特性と見極め、より大きなシナジーを引き出せ! 「自動で進むのは便利かもしれないが、楽な分だけ面白さが犠牲になっているのでは?」と疑問に思うかもしれません。本作に限らずですが、ゲームの面白さは相性に左右される面も大きめ。この『ユニコーンオーバーロード』も例外ではなく、そして本作のゲーム性は万人向けとまでは言えない内容です。 しかしこれは、「楽なゲームなので、奥深さを求める人には合わない」という意味ではありません。「試行錯誤が楽し過ぎる骨太なゲームだから、SRPG好きにこそお勧めしたい作品」に仕上がっているのが、この『ユニコーンオーバーロード』なのです。 戦闘に参加するキャラクターには、兵種である「クラス」が設定されており、戦いの立ち回りや得意とする能力、装備できる武具などそれぞれ異なります。攻撃に特化したクラスもあれば、仲間の盾になるクラス、回復や支援に長けているクラスなど、その種類は多種多彩。こちらも量が多くて説明しきれませんが、いずれも特徴的です。 クラスには特性があり、例えば「グリフォンナイト」は、地上にいる敵の近接攻撃を避けやすく、その命中率を半減させられます。そのため、アタッカーながら部隊を守る盾としても活躍しますし、回避率を上げる支援を受ければさらに盤石。「向かうところ敵なしでは!?」と、プレイヤーが意気込みたくなるほどの頼もしさです。 しかし、そこまで美味い話はありません。「グリフォンナイト」の回避戦術が有効なのは確かですが、弓に弱いという弱点を持っており、弓からの被ダメージは2倍に増加。しかも、弓を愛用する「ハンター」は必中効果のあるスキルを所持しているので、回避を許さず大ダメージを与えるという、「グリフォンナイト」の天敵とも言うべき存在です。 この一例のように、各クラスには戦場で活躍できる特性があり、そして相性による得手不得手を持ちます。しかも本作は、キャラ同士を組み合わせて1部隊を「編成」するため、様々なクラスが入り乱れる戦いが基本です。 「グリフォンナイト」だけだと心もとないので、「アーチャー」に強い「ファイター」も一緒に編成させる……こうした手段を講じるだけで、一方的にやられる状況はかなり減ります。しかし、互いの弱点を補うばかりの編成だと、今度は火力に欠けやすくなるのがもどかしいところ。この試行錯誤が実に奥深く、ともすればステージ攻略の何倍もの時間をかけて取り組んでしまいます。 また、シナジーの高いクラス同士の編成は、火力や防御力を飛躍的に跳ね上げるので、試行錯誤の結果が文字通り目に見えます。成果が視覚的に分かりやすいのも、癖になる要因のひとつでしょう。 ■「作戦」で行動を組み立てる、奥深い戦略性 『ユニコーンオーバーロード』で試行錯誤するのは、クラスの相性やシナジーの組み合わせだけではありません。戦闘中の行動はオートで進むと前述しましたが、プレイヤーはその行動条件をあらかじめ決めることが可能です。 攻撃やHP回復、支援にデバフといった戦闘中に行う行動は全て、各キャラクターが所持している「スキル」を使用する形になります。このスキルは、成長や武具の装備によって増えていくので、スキルの使い分けも重要な戦術です。 オートバトルなのに、スキルをどう使い分けるのか。それは、事前に設定できる「作戦」で発動条件を決めるだけ。例えば、特に指定のない攻撃スキルは正面の敵を狙いがちですが、「HPが最も低い敵」と設定しておけば倒しやすい敵を優先的に狙ってくれるので、敵の数を減らしやすくなります。 こうした条件を全てのスキルに指定できるので、クラス相性の組み合わせと結びつければ、戦術の幅は無限大と思えるほど。「作戦」を通して有利な状況への道筋を自ら発想し、そのアイデアが結実する結果をオートバトルで確かめる。この繰り返しが本作の奥深さに繋がり、思考が止まらない面白さを生み出すのです。 「作戦」と「編成」の相乗効果を引き出すため、戦闘前の試行錯誤は楽しく、そして時間がかかりがち。一方、いざステージに立ち向かえば、移動先の指定や戦力投入のタイミング、敵部隊との相性比較を行うくらいで、あとは移動から戦闘までオートでサクサクと進みます。 SRPGなのに、1戦1戦のバトルが意外なほど軽く、しかし戦力を構築する選択肢は途方もなく枝分かれし、前準備の段階で何手も先を読む戦略性にも富んでいます。一般的なSRPGと大きく異なる構成ですが、戦略を練る楽しさはまちがいなく感じられる『ユニコーンオーバーロード』。個人的には、SRPGの新たな可能性を切り開いたと賞賛したいほどの作品です。 ■歴代SRPGを思い出す『ユニコーンオーバーロード』のプレイ かなり独自性の高い『ユニコーンオーバーロード』ですが、遊んでいる最中にしばしば、いくつもの名作SRPGを思い出す場面がありました。個人的な実感に過ぎませんが、SRPGファンのひとりがどんな実感を覚えたのか、最後に追記させていただきます。 まず本作の物語は、かなり王道的な作りです。国を追われた王子が成長し、辺境の島から決起して反抗する物語は、『ファイアーエムブレム 暗黒竜と光の剣』あたりを連想させます。戦闘中の会話や、選択肢によって仲間が増えていくあたりも、近しい手応えがありました。 大筋の物語は分かりやすく、『タクティクスオウガ』のように民族問題へと切り込んだり、各国の情勢に合わせて国の命運を左右する選択を度々迫られる『トライアングルストラテジー』といった作品ほど、重々しい事態にプレイヤーが頻繁に立ち向かうことはありません。 しかし、個々の選択には重みを伴うものもあり、スケールこそ違えども、前述の2作品に負けないほど選択に悩む場面もあります。例えば、盗賊団を討伐するも、そのリーダーはやむを得ない事情があったと吐露し、許しを請います。 そこで許しを与えることもできますが、果たして悪党を許していいものか、見逃した後にやはり悪事を働くのではと、プレイヤー側に悩みが生じます。しかし、断罪すれば話は早いものの、更生の機会を奪ってしまうのも考えもの。ここでの選択が後々に影響する場合も多々あるので、決断は余計に悩ましく、『タクティクスオウガ』などで直面した「選ぶ重み」は本作でも味わえます。 リアルタイムに進行するバトルは、前述しましたが『伝説のオウガバトル』を想起します。俯瞰的にステージを把握し、時間経過と共に変化する戦局を見極め、有利な展開を作り上げていく。さながら軍師のような視点を、(ポーズこそ可能ですが)止まらぬ時間の中で体験する醍醐味は、時代を超えても変わらず楽しいものです。 また、「作戦」による自動行動の優先順位や条件付けの変化は、こちらはRPG作品になりますが、『ファイナルファンタジーXII』の「ガンビット」を思い出しました。一部のオンラインRPGを除けば、ジャンル全般を通しても珍しいシステムなので、『FFXII』の戦闘が好きだった人も『ユニコーンオーバーロード』にご注目ください。 特に驚いたのは、やはりステージクリアまでの短さ。他のSRPG作品と比べると非常に短く、自分の戦略ミスで負けること以外のストレスを感じる暇もないほどです。 そのためトライ&エラーも苦にならず、その手軽さゆえに「作戦」や「編成」についつい時間を費やしてしまい、時間があっという間に溶けていきました。 今回はポイントを絞りましたが、アクティブスキルとパッシブスキルの存在、フィールド探索の楽しさ、クラスチェンジも含めた育成の醍醐味、戦局を変えるほどの力があるブレイブオーダー、親密度上昇によるキャラクターの深掘りなど、本作の魅力や特徴はキリがないほどです。 発売のタイミングは不運で、大作に挟まれてしまいました。ですが、そこで埋もれることなく50万本もの記録を打ち立てた理由は、遊べば一目瞭然です。その奥深さと面白さ、今からでも味わってはいかがでしょうか。
インサイド 臥待 弦
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