【毎日書評】パワハラ、突然の解雇…仕事のトラブルにはどう立ち向かう?人生サバイブ術
「失われた30年」で、日本が貧しくなったことは誰もが実感していることだろう。先進国で唯一、30年間給料が上がらず、一人あたりのGDPはその間、7割程度に落ち込んだ。 賃金は増えないのに、国民負担率(社会保険料と税金の合計が国民所得に占める割合)は上がり続け、5割に迫る勢いだ。80年代は3割だったのに、である。これにはネット上で「五公五民」(江戸時代の年貢の負担率を示す)という悲鳴が上がっている。収穫した米の五割を年貢とし、残り五割が手元に残る状態で、幕府の財政悪化を理由に「四公六民」から「五公五民」になった途端、日本中で一揆が起きるようになったという。 しかし、令和の現在、一揆が起きる気配は微塵もない。(「まえがき」)より 『死なないノウハウ 独り身の「金欠」から「散骨」まで』(雨宮処凛 著、光文社新書)の冒頭には、このような記述があります。 しかも厚生労働省の簡易生命表(22年)によれば、日本人の平均寿命は男性が約81歳、女性が約87歳。平均寿命までまだ多くの時間が残されている方は多いはずで、にもかかわらず今後も、将来に対しての不安だけが積み上がっていくことになるわけです。そこで不安を解消するべく、さまざまな情報を集約したのが本書。 働けなくなったら。お金がなくなったら。親の介護が必要になったら。それで仕事を続けるのが難しくなったら。そして自分が病気になったり入院した時、頼る人もいなければどうしたらいいのだろう? そんな疑問から始まった取材は、がんになった場合に使える制度から「親の介護」を考えた時にまず相談する先、高齢者施設の種類と平均月額・平均入居一時金額、はたまた自分が死んだあとのペットの世話やパソコンやスマホの処分、それだけでなく遺言や散骨の方法まで網羅する結果となった。(「まえがき」より) きょうはそのなかから、第2章「仕事──プレカリアートユニオン執行委員長・清水直子さんに聴く」に注目してみたいと思います。