「車椅子インフルエンサー」の炎上騒動後、映画館に“変化”が…スロープと車椅子席が設置されていた!
今年3月、“車椅子インフルエンサー”の中嶋涼子さん(38)が、映画館での介助を断られたことを「悔しい」とXで報告したところ、「自分勝手すぎる」などと批判が殺到する騒動があった。AERA dot.は当時炎上の渦中にいた中嶋さんに取材し、本人の思いを記事にした(映画館での“介助”をめぐり炎上した「車椅子インフルエンサー」が明かす、“騒動への思い”と驚きの“後日談”)。しかし、騒動はその後、予想外の展開を迎えていた。中嶋さんが「あの時の悔しさは無駄ではなかった」と語る“後日談”とは。 【写真】「電動車いすでどこまで逃げられるかな」中嶋さんに届いた殺害予告 * * * 3月15日、映画好きの中嶋さんはいつものように「イオンシネマ シアタス調布」を訪れた。あいにく、目当ての映画「52ヘルツのクジラたち」は、全席プレミアムシートで車椅子席やスロープのない「グランシアター」でしか上映されていなかった。 そこで中嶋さんは、これまで同様、劇場スタッフに車椅子を持ち上げてもらって座席に移動し、鑑賞した。しかし帰り際、スタッフから「グランシアターは段差があって危なく、スタッフも時間があるわけではないので、今後はこのスクリーン以外で見てもらえるとお互いいい気分でいられると思うのですが……」という懸念を伝えられたという。 突然介助を断られたことにショックを受け、映画館のトイレで泣いたという中嶋さん。その日、一連の経緯をXで発信すると、「介助してもらえるのが当然と思うな」「感謝が足りない」といったバッシングに見舞われた。 「ダイレクトメールでは、『俺がお前を殺してやる。障害者様が通用するのは今日までだ。電動車いすでどこまで逃げられるかな。せいぜい楽しませてくれよ』などと殺害予告が何件も届いて、警察に被害届を出しました。犯人はその後逮捕され、そのほかの誹謗中傷にも法的措置を取ることにしましたが、さすがに怖かったです」(中嶋さん)
■ひきこもり時代、「タイタニック」に救われた 中嶋さんは当時、精神的に追い込まれ、数日間SNSを見られなくなった。しかし、「これは私とイオンシネマの問題なのだから当事者同士で解決しなければ」と決意。イオンシネマに連絡し、シアタス調布の支配人など担当者3人との話し合いの場が設けられた。 担当者によると、車椅子を持ち上げる介助は安全上のリスクがあるため以後は対応できないが、一部の映画がグランシアターでしか上映されていない運用を見直したり、グランシアターをバリアフリー仕様にしたりと、対策を検討するという。中嶋さんは騒動を招いたことを謝りつつ、「ありがとうございます。今後もシアタス調布を利用させて下さい」と応じ、円満解決となった。 しかし、SNSの炎上ムードは一向に収まらなかった。話し合いの翌週、早速シアタス調布で「オッペンハイマー」を鑑賞したことをXで報告すると、「まだ行くのか」「懲りない奴」などと大量のアンチコメントがついた。イオンシネマのWebサイトに「弊社スタッフが車いすやお身体を持ち上げる対応は控えさせていただきます」と注意書きが掲載されると、「お前のせいで介助してもらえなくなった」などと再びバッシングされた。 それでも中嶋さんはインフルエンサーとしてSNSでの発信をやめず、むしろ映画にまつわる内容を以前より積極的に投稿するようにしたという。 「誹謗中傷に負けたくなかったのもありますが、なにより、映画が大好きな人間であることを知ってほしくて。私は子どものころ引きこもりでしたが、『タイタニック』を見て映画に関する仕事に就く夢を持ちました。そしてアメリカの大学の映画学部で学び、帰国後はFOXネットワークスで映像エディターとして働きました。本気で映画が好きだからこそ、誰もが楽しめる映画館になってほしいと強く願っているんです」(中嶋さん)