【視点】米兵犯罪 対応の検証必要
在沖米軍の兵士が女性に性的暴行を加える事件が続発した。許し難い蛮行だが、日本政府や県警が事件を県に連絡せず、公表もしていなかったことも県民の不信を招いている。米軍に綱紀粛正を求めるのはもちろんだが、事件後の対応に問題はなかったのか、検証が必要だ。 那覇地検は3月、嘉手納基地に所属する米兵が昨年12月、読谷村で16歳未満の少女を誘って自宅に連れ去り、わいせつ行為をしたとして起訴していた。 さらに5月には、県警が県内で女性に性的暴行した海兵隊員を逮捕していた。 いずれの事件も県に連絡がなく、県は把握していなかった。国や県警は県に連絡しなかった理由について、被害者のプライバシーに配慮したと説明している。玉城デニー知事は「沖縄防衛局、外務省や県警との情報共有のシステムをもう一度確認すべきだ」と述べた。 米軍絡みの事件・事故で常に問題視されてきたのは、日米地位協定の規定だ。事件を起こした米兵は現行犯逮捕を除き、起訴後でなければ日本側に身柄の引き渡しがない。 日本側の捜査が制限されたり、米兵が逃亡する恐れがあり、沖縄からは協定見直しを求める声が強い。だが1960年の発効から見直しは一度も行われていない。 事件・事故そのものはいつでも、どこでも発生のリスクはある。米軍絡みの事件・事故が特殊なのは、米兵に対し、日本の法律に基づいた通常の手続きが適用できないところにある。 米軍基地の整理縮小を進め、基地面積を減らすことだけが負担軽減ではなく「日本国民、沖縄県民がアンフェアな扱いを受けている」という不満を解消することが日米両政府には求められる。また、それこそ米軍基地問題の本質であるとも言える。 日本で犯罪を起こした場合は米国内より優遇的な取り扱いを受けるという実態が存在するなら、米軍の綱紀粛正も進まない。 ただ、今回は日本側と米軍の関係というより、県と日本政府、県と県警との間で情報共有が円滑にされていないことがトラブルになっている。 性犯罪はセンシティブな扱いが必要になることも事実だ。個々の事件の状況が不明なまま、日本政府や県警の対応の是非を論評するのは難しい。ただ情報共有や公表の有無に関し、線引きが曖昧であることは望ましくない。 特に今回の事件で県への通報や公表が遅れたのは、県議選への影響を避けるためだったのではないかという批判が出ている。疑惑を持たれないためにも、県民が納得できる基準づくりの検討が必要だろう。 改選後初の県議会6月定例会が開会し、野党が「オール沖縄」県政への追及を強めることが予想される。だが今回の事件を機に「オール沖縄」勢力が再結集の兆しを見せており、風向きはまた変わるかも知れない。事件は沖縄の政治にも波及しそうな雲行きだ。