やっぱり〝野放し〟外国人パー券問題 岸田首相「ザル法」の焦点も言及せず「議論を活発化させない与野党の不作為」島田洋一氏
自民党派閥の裏金事件を受けて、政治資金規正法改正の与野党案の審議が22日から本格化する。当事者の自民党は改革姿勢を期待されたが、独自案表明は大幅に遅れ、連立を組む公明党からもそっぽを向かれた。「ザル法」と批判される同法改正の焦点だった「外国人のパーティー券購入禁止」にも言及していない。岸田文雄首相(党総裁)は、国民が求める改革の形に「聞く力」を発揮しないのか。 【アンケート結果】岸田首相にいつまで続けてほしいか 「今国会で改正を確実に実現しなければならない」「公明党と力をあわせ、野党の意見も聞きながら、特別委員会での議論に真摯(しんし)に対応する」 20日の衆院予算委で岸田首相はこう強調した。だが、改正案公表は主要政党で最も遅く、公明党が国会で岸田首相を〝追及〟してようやく独自案を公表した。 予算委で立憲民主党の野田佳彦元首相は「一番遅いうえ中身が一番薄っぺらい。反省がない。『顔を洗って出直してこい』と啖呵(たんか)を切りたくなる」と酷評した。 「岸田首相や自民党が議論から逃げた」(保守系野党議員)と批判されるのが、外国人のパー券購入問題だ。政治資金規正法では「外国人献金の受け取り禁止」を明記している(22条の5)。わが国の政治や選挙結果への介入を防ぐためだが、パー券購入は〝野放し〟だ。 岸田首相は「『諸外国の状況』や『他の制度』との均衡など、さまざまな観点から議論を行い(改正案の)条文をまとめた」と胸を張るが、欧米各国などは外国勢力の政治介入などを阻止する法制度が一般的だ。米国では、外国政府・団体の権益を代表するロビイストは司法省への登録制で、不正接触や資金提供は処罰される。こうした「状況」は参考にしなかったようだ。 産経新聞社とFNNが18、19両日に行った合同世論調査でも、自民改正案が「政治とカネ」の問題の再発防止につながるか、との問いに、計7割超が「あまりつながらない」「全くつながらない」と回答した。 国際政治に詳しい福井県立大学の島田洋一名誉教授は、「外国人献金の法規制は、安全保障やスパイ防止の観点から極めて当然の対応だ。議論を避ける岸田首相の対応は理解不能だが、議論を活発化させない与野党の不作為も問題だ。『台湾有事』が現実味を帯びるなか、中国の介在が強く懸念されており、法改正は急務だ」と強調した。