企業の規模別分類が法改正で変わり、大企業と中小企業の間に「中堅企業」の区分が新たに設けられた。政府は地域経済のけん引役と捉え、投資への大規模補助や税制優遇措置を通じて支援に乗り出したが、地方では数が限られているのが実態だ。地域を挙げて中小企業を中堅企業の域に引き上げ、産業力強化を図るべきだ。 　５月に成立した改正産業競争力強化法で、従業員数２千人超を大企業とし、中堅企業は２千人以下で中小企業（製造業の場合は３００人以下または資本金３億円以下）を除く範囲と定義された。経済産業省は、中堅企業の売り上げと設備投資は拡大し、賃金の伸びが大きく、国内経済の成長に貢献していると判断。上限５０億円の投資補助金、設備投資と賃上げ促進での税優遇などにより背中を押す。 　これまで国は各種の助成制度などを通じ、中小企業の事業存続を等しく支援してきた印象が強い。いわば、護送船団的な保護策の流れが受け継がれてきた。今回の法改正は、中小から中堅へのランクアップを目指す、成長性と意欲を秘めた産業の担い手を後押しする大きな方針転換とも受け止められる。経営者には、事業発展に向けた気概と自助努力が一層求められる。

　東京商工リサーチによると、今年３月現在で中堅企業は全国に９２２９社、県内に４７社ある。全企業区分中の構成比を見ると、県内は０・２％で全国平均を０・５ポイント下回っている。経産省は今年度、全国の経済産業局ごとに「中堅企業等地域円卓会議」を開催して中堅企業への支援を検討する。東北ブロックでは、いかに中小企業の売り上げと収益、雇用を伸ばし、規模拡大につなげるかが大きな論点になるだろう。 　同省は、地域経済の中心的な担い手を「地域未来牽引企業」として選び、県内では幅広い業種からこれまでに１２４社が登録されている。ただ、県民にその存在が広く知られているとは言い難い。 　現在は中小企業の域にとどまっている牽引企業の財・サービスの地産地消によって、各社の業績はさらに伸びる。中堅企業に規模が拡大すれば、事業に幅が出て県民の採用も増える。本県の産業力の強化に結びつく好循環をぜひ、実現したい。（菅野龍太）