「黒田日銀」は国民に幸福をバラ撒きすぎた…これからやってくるとてつもない「しっぺ返し」
長期金利が上昇すれば、国債の評価損がどんどん膨らむ
藤巻:山本さんは、今後、日本の長期金利は一段と上がっていくとおっしゃいましたが、私が参院予算委員会で日銀に質問したところ、2023年9月末時点で日銀の保有国債の評価損はすでに約10兆円(当時、10年物金利は0.76%だった)もあり、金利がパラレルシフトすると、1%の金利上昇で評価損は29兆円程度増加するとの話でした。今後、長期金利が一段と上昇するようになれば、日銀が抱える国債の評価損がどんどん膨らんでいきます。 目下のところ、本来なら中央銀行が保有すべきでない株の評価益があるからいいものの、今後、日銀が国債やETFの買い入れ額を減らして過剰流動性を吸収する局面になれば、株価が下がり、評価益が激減するリスクもあります。私は、日銀が本格的に出口戦略を進めれば、ものすごい債務超過になると予測していますが、それでも大丈夫でしょうか? 山本:あくまでも2023年度末時点ですが、日銀が買い進めてきたETF等の含み益が約38兆円もあるので、国債の評価損が出ても、なんとかそれでカバーできてしまうという状態です。 ただし、これはあくまでも株価次第ですから、株価が急落したり、金利が大幅に急騰したりする局面では、日銀が債務超過になる可能性があることは否定できません。ただし、中央銀行の場合、債務超過になったからといって、ただちに資金繰りに困るということはありません。 藤巻:日銀は、自分で日銀券を発行できるので、資金繰りに窮することはないですからね。 山本:債務超過になったからといって、ただちに危機が発生することはありませんが、かといって楽観視できる状態ではありません。要は、マーケットがどう見るかというその一点に尽きると思います。日銀が市場からの信頼を失えば、資金繰りではなく、まず為替が急落するところからスタートして、混乱が起きかねません。 藤巻:要するに中央銀行が危機的状況になるということは、その発行する通貨が信用を失うことを意味します。円の価値が失墜することになれば、円は紙くず化し、1ドル=1兆円になるようなハイパーインフレが起きるでしょう。 山本:藤巻さんのおっしゃることは過激で、少しついていけない部分もあるのですが(笑)、最終的にハイパーインフレにならないまでも、非常に高いインフレ率になることはあり得る話です。通貨に対する信認は、心理的な要素によるところが大きく、ある閾値(しきい値)」を超えた時点で突如崩壊するものです。それがいつどこで起きるかは、マーケットの心理によるので、それを予測するのは難しい。とはいえ、日銀も政府もそのような事態になるまでに、何らかの手を打つとは思いますが……。 藤巻:私に言わせると、日銀も政府も手を打ちすぎです。むしろ、過剰な介入で市場機能を殺してきたことに、日本経済の長期停滞の原因があるのではないでしょうか。常々感じていることですが、日本は資本主義の国というよりは計画経済の社会主義国のようです。 山本:私も、藤巻さんがおっしゃっているように、日本はどんどん市場経済から離れつつあるように感じます。戦後はずっと「市場競争を大事にする」という考えが主流でしたが、1990年代から、こうした考えが明らかに後退しています。政治的にも、選挙対策で、社会保障を充実させる政策や不況に苦しむ企業を救済する景気対策が広く行われるようになりました。その結果、生まれたのが、財政規律の著しい後退です。競争に負けた企業まで救済するような政策が広く行われた結果、経済の新陳代謝が進まず、生産性が低下していくという悪い流れになりつつあります。その流れを断ち切ることが一番大事なことだと考えています。