阪神・青柳自主トレ“門下生”はなぜブレイクするのか? 村上に続き、今季は岡留が覚醒…ドラフト5位の”たたき上げエース”が説く、1軍での生存戦略
日本一連覇を目指す阪神タイガースの開幕投手、青柳晃洋。そんな“虎のエース”が主宰する合同自主トレに参加した選手がいま、続々とブレイクしている。ドラフト5位からプロの世界で成りあがった男が語る、「勝てるピッチングの真髄」とは。青柳と意見交換を重ねる野球評論家&ピッチングデザイナーのお股ニキ氏が書きつづる。 【画像多数】合同自主トレ“チーム青柳”の様子
“門下生”が続々とブレイクする“チーム青柳”
今季、球団史上初の日本一連覇を目指す阪神タイガースにおいて、開幕投手の大役を2年連続で務める青柳晃洋。 “虎のエース”の影響力はマウンド上だけに留まらない。過去2年間、自身が主宰する合同自主トレ“チーム青柳”が、チーム内外で密かなブームを起こしているのだ。 2021年に最多勝のタイトルを獲得し、2022年には投手三冠にも輝いた青柳は、2023年1月に後輩を引き連れて静岡・沼津で合同自主トレを初開催。前年よりも参加人数が増えた今年1月の合同自主トレも大盛況だった。 昨季は青柳合同自主トレ“門下生”である阪神の後輩投手、村上頌樹が前年1軍未登板ながら、MVP&新人王を獲得するほどに飛躍。また、青柳と帝京大学時代の同級生でもある西村天裕(ロッテ)も合同自主トレに参加し、昨季44試合登板で防御率1点台とキャリアハイの成績をあげた。 青柳合同自主トレ“門下生”たちが毎年のようにプロ野球界でブレイクする背景には、いったい何があるのだろうか――。
「僕みたいな変則投法の言うことなんて誰も聞かないですよ」
合同自主トレでは、技術やフィジカルの向上はもちろん、メンタル面の強化にも重点を置く。青柳自身がドラフト5位からの“たたき上げエース”としてブレイクした経験を活かし、参加する選手たちにそのノウハウを惜しみなく伝授している。 青柳の投球理論の根幹にあるのは、「とにかく力まず、楽にボールに力を伝えること」と、「上半身を開かず、足を着いてから投げること」のふたつの極意だ。 シンプルだが、ピッチングの真髄であり、核心をついている。足を着いてから地面の力を受け、上半身は開かずに捻転差を生み出すことにより、ボールに最大限の力を伝えつつ、ケガのリスクを減らした、安定感のある投球が可能になる。 体への負担も軽減できるうえに、力いっぱい投げる必要がなくなるので、たとえ調子を落としてもなんとかなるのだ。かつて制球に苦しんでいた青柳も、8割の力で投げる脱力投法を会得してからはコントロールが安定した。 その一方、選手それぞれの投げ方を尊重し、特定のフォームを強要することはしない。 「僕みたいな変則投法の言うことなんて、誰も聞かないですよ」 青柳はそうやって謙遜しながらも、後輩たちのピッチングを真摯に見守る。「足を着いてから投げているか」「体重移動の方向がしっかりとホームに向かっているか」という2点だけはしっかりと確認して伝えているという。