オーストラリアで高級電気自動車（ＥＶ）の市場が供給過剰の問題に直面しており、販売店は損失を覚悟で販売せざるを得ない状況に陥っている。この背景には、消費者の嗜好（しこう）の変化と中国メーカーの台頭がある。オーストラリアン・ファイナンシャル・レビューなどが報じた。 　米投資銀行モーリスのアナリスト、サラ・マン氏によると、生活費が高騰しているにもかかわらず、高級ＥＶの在庫が過剰となっており、需要と供給のミスマッチが引き起こされている。これにより、販売店は売れ残った在庫を処分するため、大幅な値引きを余儀なくされている。 　消費者が高級ＥＶ購入に慎重になる背景には、充電インフラの整備の遅れや、中古車市場での将来的な価値が不透明であることが挙げられる。 　一部のディーラーは、ジャガー、メルセデス・ベンツ、ＢＭＷなどの高級ブランドが販売する価格帯が７万豪ドル（約700万円）以上のモデルの供給過多に直面している。テスラもオーストラリア市場で価格を積極的に引き下げてきたが、販売は鈍化している。 　■ＢＹＤシェア拡大、ＰＨＶ市場にも参入 　一方、中国の比亜迪（ＢＹＤ）は、コストを抑えながらも高い機能性を持つＥＶを提供し、シェアを拡大している。 　またＢＹＤはオーストラリアのプラグインハイブリッド車（ＰＨＶ）市場にも参入し、ピックアップトラック（ＵＴＥ）「シャーク６」を投入する予定だ。ＰＨＶを含むハイブリッド車（ＨＶ）は、ガソリンエンジンとバッテリーを併用することで、国内地方部で懸念されている充電切れの不安に応えることができる。 　オーストラリアでは、ＨＶは過去５四半期連続で純ＥＶを上回る販売台数を記録しており、市場シェアは約17％とＥＶ（6.6％）のおよそ2.5倍となっている。 　ＢＹＤは、24年第３四半期（７～９月）に過去最高の428億5,000万豪ドルの利益を上げており、今年は世界販売でフォードを追い抜く勢いだ。