「自分の知らない感情を出すことができました」ドラマ『情事と事情』出演・佐藤寛太が語る、表現力について。単独インタビュー
「見つめ合う」シーンで感じた倉科カナの印象
ーーー世良は彩江子(さとうほなみ)の恋人でありながら、愛里紗(倉科カナ)のことも気になっていきます。2人との関係性について、それぞれと接するシーンで演技のモードをどのように変化させるのか、苦労した点などをお聞きできますか? 「特に苦労したということはなく、世良は自分の感情に蓋をすることができないキャラクターだと感じました。 愛里紗に対して直接『好き』と言葉で伝えることはないのですが、作品の中では彼のほんのわずかな感情の変化が行動や視線に出ていて、そこに彼の欲望や本当の気持ちが表れている気がします。 愛里紗とのシーンでは、言葉ではなく行動で気持ちが出てしまう。『あ、この人を喜ばせたい』と思って動いていたので、僕もその場その場の気持ちに正直に演じました」 ーーー愛里紗を演じられた倉科カナさんの印象を教えてください。最初の印象と撮影後に変わったことはありましたか? 「倉科さんは、僕が役者を始める前からテレビで見ていた方。明るい笑顔の印象が強かったのですが、お会いしてもそのイメージは変わらず、自分が思っていた通りの方でしたね。ただ今回のドラマでは、僕が愛里紗を見ているシーンが多くて、脚本に『…』、『見つめ合って』と書いてあるシーンでは、『今この人は何を考えて見ているんだろう?』と考えたり、『え、どう思ってるんですか?』と思わず尋ねたくなるような瞬間が何度もありました」
さとうほなみが引き出してくれた感情演技
ーーー世良の恋人役の彩江子を演じられたさとうほなみさんと共演するシーンも多かったかと思います。一緒にお芝居をされていかがでしたか? 「そうですね。ほなみさんとのシーンが一番多かったです。ほなみさんもまた倉科さんと同じく『笑顔が素敵な方だな』と思ったのが最初の印象です。 ほなみさんが演じた彩江子は、仕事や女性問題に対して声を上げるキャラクターなんですが、その背景には、過去のトラウマがあって、他の人の気持ちを代弁しているところがあるんです。でも、その優しさが時々彩江子自身を押しつぶしているようにも見える…のですが、ほなみさん自身にはどんなことがあっても押しつぶされることなく、どんなに疲れていても優しさを持ち続けられる方だと、撮影を通して思いました」 ーーー撮影を終えた今、振り返って、印象に残っているさとうさんとの交流エピソードがあればぜひ教えてください。 「言葉にすると恥ずかしいですが、“戦友”のような関係になっていたのではないかと思います。ほとんどほなみさんと一緒に撮っていたので、特に、僕らは後半に役同士が抱えてるものをぶつけ合うシーンがあるんですが、お互いにさらけ出して芝居ができたんじゃないかと思います。 恋人関係になると、互いの欲望によって本音と建前が崩れる瞬間があると思うんです。本作でもそのような局面が描かれているのですが、ほなみさんが遠慮なく力強い感情をぶつけてきてくれたおかげで、僕も自分の知らない感情を出すことができました。そういう経験が現場でできることって、なかなかないと思うので、自分の中に深く刻まれる作品になりました」 (取材・文:タナカシカ)
タナカシカ