天の川銀河中心部の「複雑な磁場環境」、最新地図で明らかに
銀河中心500光年以内の塵粒子が放つ遠赤外線を観測
この探査は当初、CMZ全体で赤外波長域の磁場にどのような違いがあるかという問題に取り組むために提案されたと、今回の研究をまとめた論文の執筆者らは指摘している。論文は天文学誌The Astrophysical Journal(APJ)に投稿された。 FIREPLACEは、銀河系の中心500光年以内にある低温の塵粒子から放射される遠赤外線を観測する。塵粒子はこの領域の磁場によって整列している。 観測では、磁場の強さと向きのデータ約6万5000個が得られたと、APJに投稿された論文の筆頭執筆者で、ビラノバ大天体物理学科の博士課程修了研究者のディラン・パレは、取材に応じた電子メールで語っている。 磁場の強さと向きに関する情報は、赤外光の偏光(光の振動面が偏っている)状態を測定することで得られると、チャスは説明した。 磁場は、どのように整列しているのだろうか。 パレによると、磁場は銀河面(銀河系円盤の中央部)に平行な方向と垂直な方向の2方向に選択的に整列している。この2つの方向は、銀河系中心部の異なる構造と結び付いているという。 平行方向は、この領域内の分子雲の分布に一致しているのに対し、垂直方向は、銀河系中心部の全域に見られる特異な糸状構造体の分布と一致している。今回の観測結果により、この領域の磁場が整列する仕組みに関する知見をはるかに向上させることができると、パレは指摘している。 ■磁場はなぜ重要なのか? チャスによると、磁場は星形成にとって重要だが、星形成は非常に非効率的だ。 恒星は天の川銀河にある塵の雲が収縮して形成されるが、この過程は観測されるよりもはるかに速いペースで起こるはずだという。星形成がこれほど非効率的である原因の1つは磁場だと、チャスは指摘する。なぜなら、磁場が圧縮されると反発することで、星を形成する雲の収縮を妨げるように作用する可能性があるからだと、チャスは説明している。 今後の研究の展望についてはどうだろうか。 パレによると、今回のFIREPLACE観測における磁場の分布が、どのような物理的過程に基づいているかに関しては、まだ明らかになっていない。今後の研究では、この領域にあるさまざまな構造に磁場がどのように結び付いているかについて、さらに分析を進める予定だ。これにより、磁場が銀河系中心領域をどのように形作り、どのような影響を及ぼしてきたかに関する理解がさらに深まるに違いないと、パレは話している。
Bruce Dorminey