<高校野球>豪雨で被災も「練習に行け」家族に背中を押された倉敷商・原田主将 第92回選抜高校野球
8年ぶり4度目のセンバツ出場を決めた倉敷商(岡山)の原田将多主将(2年)は、2018年の西日本豪雨で甚大な被害を受けた倉敷市真備町地区出身。自宅は浸水し、同校OBの父浩司さん(49)が夏の甲子園で持ち帰った土も流されてしまった。浩司さんは「感無量。自分の分も思い切って戦ってきてほしい」とエールを送り、原田主将も「甲子園ではお父さんを超えたい」と意気込んだ。 【映像】地区大会決勝・鳥取城北との熱戦 豪雨が襲った18年7月6日夜。避難勧告が出され、野球道具を車に積んで、家族で近くの避難所に逃げた。「すぐに帰れる」と思っていたが、現実は厳しかった。3日後、自宅に戻ると、2階まで浸水しており、数日間は親戚の家などを転々とした。「こんな時に野球をしていいのか」と悩んでいたところ、浩司さんに背中を押された。「家は大丈夫だから、気にせず練習に行け」。原田主将は家族と離れ、しばらくの間、同市中心部にある中学時代の同級生の家に世話になり、練習に通った。 約1カ月後、学校から車で10分ほどのアパートに引っ越し、ようやく家族での生活を再開した。19年8月には真備町地区内の新居が完成したが、家族は「練習に通いやすいように」と、野球部を引退する今夏までアパート暮らしを続けることを決めた。 家族の思いに応えようと、原田主将は燃えた。「打つ前に『ため』を作った方がいい」との父の助言を生かし、昨秋の公式戦でいずれもチームトップの打率4割4分7厘、18打点をマーク。浩司さんは「想像以上に打ってくれた」と目を細める。被災経験を「人より野球以外のところで強くなれた」と振り返る原田主将。甲子園でも活躍し、支えてくれた人々に感謝の気持ちを伝えるつもりだ。【松室花実】