【広島・秋山翔吾のバッティングバイブル】NPBシーズン最多安打記録ホルダーが、唯一無二の“打撃理論”を実演解説!
投手のお尻が落ちるタイミングに自分の体の動きを合わせていく
タイミングを合わせる際は、基本的には投手の「足が上がる」「お尻が下がる」に合わせて「引く」「行く」を調節するのですが、2023年の僕はシーズン途中にフォームを変更しているので、その前後では足の使い方が違います。「軸足:踏み込み足」が「9:1」の割合で立っていた“変更前”のフォームでは、左の足裏全面で体のバランスを取って重心を受けている感覚。ヒザや股関節をグッと入れ込んで軸足側に体重を乗せていく人もよくいますが、僕の場合、それをやるとどうしても捻りを使って大きく回しながら打つイメージが浮かんできてしまうので、採り入れませんでした。 右足を上げて立つときは、左の足裏全体の上にしっかり足首、ヒザ、股関節が乗り、上からクッションを押すようにグッと体重を掛けます。そして、投手のお尻が落ちてくるタイミングに合わせてこちらも右足を踏み込みながら打ちに行く。タイミングの合わせ方としては、その部分に集中していました。 一方、ほぼ「5:5」に近い割合で立っていた“変更後”のフォーム。まずは両足均等にバランスを取って立っているだけなので、どちらかに体重を乗せているわけではありません。そこから投手が足を上げたら右足をポンッと踏み、向こうのお尻が落ちてきたらパッと右足を上げて左足に体重をグッと乗せる。頭がブレるのは良くないので「右→左→右の体重移動」とまでは言いませんが、右足でワンクッションを入れてから上げることで勝手に左足に体重が乗る、という感覚です。僕の周りでも西川龍馬選手(オリックス)や近藤健介選手(ソフトバンク)などがこういう打ち方をしているので、わりと受け入れやすかったですね。
ちなみに、止まっているところから右足をその場でただ上げ下げするだけだと、体重が前にズドンと乗って投手方向へ突っ込むリスクが高くなってしまうので、僕は右足を踏んだあとに1足分ほどスッと左に寄せて、動きながら上げるというリズムにしています。わずか1足分とはいえ、1歩引いて少しでも歩幅を狭くしておくことで動きのブレを小さくして足を上げる時間も確保できるので、僕にとってはすごく大切な要素。車のブレーキを離した状態でスーッと徐行運転しながら待ち、右足を上げてから少しずつアクセルを踏んでいくというイメージですね。
週刊ベースボール