インタビューで、内角打ちについて語る末次さん

　巨人球団創設９０周年記念の連続インタビュー「Ｇ九十年かく語りき」の第６回は、Ｖ９時代にＯＮの後を打ち「最強の５番打者」として大きな存在感を発揮した末次利光さん（８２）だ。大舞台になるほど光る勝負強さで魅了した一方、不慮の事故で選手生命を絶たれた悲運のスラッガーでもあった。（取材・構成＝湯浅　佳典、太田　倫） 　【取材後記】 　目深にヘルメットをかぶり、派手な感情表現なんてもってのほか。末次利光をオンリーワンの選手にしたのは、そのハードボイルドな個性にもあった。 　ルーツを聞いた。「まだ若手の頃に、高田繁が凡退して、あるコーチに『ヘラヘラしてるんじゃねえ！』って怒られたのよ。それを見て『オレは絶対グラウンドでは笑わないぞ』ってね」 　ユニホームを脱げば、陽気な素顔とのギャップに驚かれた。「飲みに行くと『あなたは本当に末次さんなの？』なんて言われる。野球やっているのは影武者。決してハードボイルドじゃないし、そんなカッコいいもんじゃないよ」。グラウンドではまず見られなかった、照れ笑いが広がった。（野球デスク・太田　倫） 　◆末次　利光（すえつぐ・としみつ）１９４２年３月２日、熊本・人吉市出身。８２歳。鎮西、中大を経て、６５年から１３年間巨人でプレー。７１年には日本シリーズＭＶＰ。７４年にはベストナインにも輝いた。引退後は２軍監督、スカウト、編成部長などを歴任し、高橋由伸、上原浩治、阿部慎之助、亀井善行らの獲得に尽力した。７４年に民夫から改名。