梅酒を地域の新産業に、「甘くない梅酒」が新しい需要を作り出す
藤本さんは、営業先として主に東京に販路を見出す。「東京には、多少のお金を出してもお酒を楽しむ人が多いというだけでなく、福井県出身者の結束と助けが大きい」と説明する。福井県にゆかりのある飲食店を中心に出向き、営業する。もちろん断られることもあるが、都内の取扱店は50店舗を超えた。 「梅農家の生産にこだわる思いをなんとかしたい」と藤本さんは言葉に力を込める。若狭の地で生まれた「紅映」の単位面積当たりの収穫量は少ないが、生産農家はその味にこだわり、品種を変えようとしない。一方で、若狭町の農業も、後継者不足に悩んでいる。若い世代はいるが、多くはサラリーマン。梅の実の需要が高まれば、農業の魅力も高まるだろうと将来を見据える。 「産地が弱体化しないよう、農家の収入を増やしたい。若狭の梅酒を売り込んで、新しい需要を生み出したい行きたいのです」。終始、穏やかな表情で話すが、そこには「地域のために働きたい」という、かつての行政マンの決意が見て取れた。