ジオパークで「石」売っちゃダメ?ユネスコ指針抵触で認定解除の危機…貴重な収入源「理念だけ押しつけられても」
同社は化石の販売スペースを一部縮小し、他の商品に置き換えるなど歩み寄る姿勢も示している。田中社長は「ジオパークが地域にとって大事なのも理解している。我々の事業が継続できる内容でまとまるように協議は続けていきたい」と強調する。
再認定審査に向け、協議会は各市町に要請し、玄武洞公園など6か所にユネスコの理念などを記した看板の設置を進めている。また、2025年度末に販売を中止するとした独自の目標を掲げ、再認定審査後も協議を継続する方針だという。
ただ、県などが再認定に躍起になる一方、地元の反応は冷ややかだ。複数の関係者からは「世界ジオパークによる経済的、観光的な効果は薄いのに、理念だけ押しつけられても納得するのは難しいだろう」との声が上がる。
協議会事務局の小林辰美副局長は「協議会にはユネスコの理念に従って販売をやめるよう呼びかける義務があるが、(玄武洞観光に)販売中止の義務はないことに問題の難しさがある」としながら、「再認定審査では協議会としての取り組みの姿勢を示し、理解を得るようにしたい」と話している。
「糸魚川」でも懸念材料
世界ジオパークにおける石の販売は山陰海岸以外でも懸念材料となっている。
国内で最初に世界ジオパークに認定された3か所のうちの一つで、宝石の一種・ヒスイの産地として知られる新潟県糸魚川市の「糸魚川ジオパーク」は2009年の初審査の際、海外産のヒスイ製品の販売が問題となった。
同市は縄文時代からヒスイ文化の歴史があり、1938年に再発見されて以降、地場産業として加工・販売が行われてきた。同ジオパーク推進協議会は、販売業者らと協力してヒスイの保護・保全に取り組むことでユネスコ側から「伝統工芸」として販売する承認を得ており、過去に採掘された地元産の原石を使った加工品であることや、小規模業者による加工・販売であることなどを条件としている。
一方で、ミャンマーなど海外産の原石を用いる業者も存在する。協議会はこうした業者にも働きかけ、糸魚川産ヒスイのブランド化支援や地元産製品への転換を促す。担当者は「ヒスイ業者にも生活がある。対話をしていくことが必要と考えている」としている。
◆ 山陰海岸ジオパーク =山陰海岸国立公園を軸にエリアが設定され、兵庫、京都、鳥取の3府県6市町で構成。2007年に山陰海岸ジオパーク推進協議会が発足し、10年に国内で4番目の世界ジオパークとして認定された。協議会(事務局・県豊岡総合庁舎)は、主に各府県と市町が支出する負担金で運営されている。