松尾潔「公益通報のスタンダードを変える時期」兵庫県知事パワハラ疑惑
知事の涙で情緒的なところに落ち着くのは危険
僕も去年、マネジメントでお世話になっていた事務所と関わりが深い、旧ジャニーズ事務所のあり方や、経営トップだったジュリー藤島さんについて、この番組でお話ししたり、SNSなどで疑義を呈したりしてきました。 そのとき「自分が世話になっている会社の批判をするなんて、あいつは日本人か」とまで問う声がありました。「日本の美徳にそういうことはないだろう」と言わんばかりですよね。「今はそういう時代じゃないでしょ」と反論すると、「ほらまたその口で言っている」みたいな。まぁ酷かったです。「それで生活しているんだったら、あんた黙ってなさい」というような声って本当にまだ根強いんだなと感じました。 僕は社員とか公務員という立場ではないので、「じゃあそこ(所属事務所)を離れます」という決断がしやすかったんですが、なかなかそうはいかない方も多いだろうなと察しますし、いろんな思いを抱えたまま、だけどグッと言葉を飲み込んで、定年まで全うする選択肢も容易に想像できるわけです。 でも、それで思い詰めた挙句に命を絶つという最悪の結果にもなりかねないということが、今我々が見ていることです。ある種、戦時下のシミュレーションみたいな状況だったんでしょうね。過去形にしていいのかどうかわからないですけれども。 我々、今を生きる者として「こういうのを変えていきましょうよ」と申し上げたいです。もちろん、いたずらに斎藤知事の人格攻撃をすることを僕は好ましいことだと思っていませんが、「あんなに泣いてはるんやから、もうええやん」みたいな情緒的なところに落ち着いてしまうのはもっと危険だと思っています。
公益者通報に対するスタンダードを変える時期
TBSテレビの『報道特集』で、維新の増山誠兵庫県議が、「亡くなった局長のプライバシー情報も百条委員会に提出すべきだ。なぜなら彼は、県知事のプライバシーも取り上げていたんだから、本人もプライバシーを出すべきだ」みたいな発言をしていました。 亡くなった局長はそのことを気にして「やめてほしい」と言っていたんですが、増山県議は彼なりの正義というのがあったのか、「我々は使命を全うしただけだ」と。 僕にとっては、かなりセンセーショナルでした。これを機会に公益者通報に関してのスタンダードをもうガラリと変える時期に今あるんじゃないでしょうか。「このタイミングでやらないと、ずっと変わらないんじゃないかな」というような危機感さえ抱いています。