七代目尾上菊五郎が岡っ引き・半七を熱演 江戸末期の情緒が盛り込まれた時代劇「半七捕物帳」第1話のあらすじと見どころに迫る
七代目・尾上菊五郎が主演を務める痛快時代劇「半七捕物帳」(1979年、全26話)が、BS松竹東急(全番組無料放送・BS260ch)にて2025年1月7日(火)昼1時30分より毎週月曜~金曜に放送される。江戸時代を舞台に、神田三河町の十手を預かる親分肌の岡っ引き・半七が江戸の悪を追う本作。今回は、第1話のあらすじや見どころを紹介していく。 【写真】建物の影から顔を覗かせる七代目・尾上菊五郎“半七”ら ■岡本綺堂氏による“大衆文学作品の最高峰”をドラマ化 本作は、岡本綺堂氏による小説『半七捕物帳』が原作。探偵物語のような楽しさと、江戸末期の情緒をたっぷり盛り込んだ人情時代劇だ。大正6年に発表された岡本綺堂氏による原作は、昭和11年まで約20年間にわたって書き続けられた。話数は68篇にものぼり、“大衆文学作品の最高峰”とも言われている。 そんな本作では、若くして道楽の味を覚えた半七が、家を飛び出して神田の吉五郎という岡っ引きの乾分(子分)となり、19の春の初手柄以来“神田三河町の親分”として、数々の手柄を立てながら活躍していく様子が描かれる。 当初は本の端役に過ぎなかった岡っ引きの半七を主人公に据えている本シリーズは、次第に人気を呼び、それ以降次々に捕物帳が発表された。男くさい戦シーンが中心だったそれまでの時代劇に比べ、本作は身近な事件を取り上げることが多く、当時“新しい時代劇の形”は存在感を示した。江戸時代に生きる人々の人情や歳時記がいきいきと描かれている作風で、今でも多くの時代劇ファンを虜にし続けている。 ■不可解な事件に半七が挑む…第1話「異人の首」あらすじ 物語の舞台は江戸時代末期、江戸っ子の意地と鯔背が火花を散らす神田三河町。恋人のお仙(名取裕子)と暮らしている岡っ引の半七(尾上)が主人公だ。 ある時、アメリカ公使の通訳官・ヒュースケンが、上位等の薩摩藩士に斬られて亡くなった。それからというもの、江戸のあちこちで上位等と称する輩が商人から軍用金を脅し取る手口が横行し、世情はにわかに騒然となった。 そこへある夜、女性の異人の首を持った覆面姿の男2人組が丸井という質屋へ300両の金を借りにやって来る。“外国への戦争問題に発展しかねる事態になる”と懸念した半七は、さっそく丸井へ出向く。すると、質屋の番頭が男らへの恐怖心から金をかき集め、150両ほど手渡したことを知る。また、他の質屋も同じような被害に遭っており、その番頭は抵抗したところ殺されてしまったのだった。 しかし息絶える前、番頭は男2人の声を聞いて何か気づいたのか「あの声は…」と言い残していた。一刻も早い異人女性の身元を突き止める必要があったが、残された証拠は髪の毛1本だけ。江戸に住む異人もそこまで多くないものの、捜査は難航する。 半七は、横浜港が開港し異人館が増えたことから、“横浜で起きた事件では”と推測。そして恋人のお仙たちに見送られながら、自ら横浜行きを志願する。その後半七たちは横浜へ到着し、岡っ引の子分に連れられ食事をしていると、“逢引き中の娘が異人の生首を見せられ、腰を抜かしたところを襲われた”という噂が耳に入ってくる――。 ■七代目・尾上菊五郎が魅せる表情やセリフに注目 第1話は、不可解な異人の殺人事件の解決に半七が奮闘する姿が描かれた。同話での注目ポイントは、主役・半七を演じる尾上のスマートな魅力と存在感だろう。 「半七捕物帳」は過去に何度も映像化されており、梨園の名家である先代の六代目・尾上菊五郎さんが“当たり役”だと言われていた。プレッシャーを感じるであろう本作に挑んだ七代目だが、そこには“先代を踏襲しよう”と意気込むような熱気が感じられる。事件のヒントを察知した際のスマートな目つきや、気迫のあるセリフ回しに注目だ。 そんなカッコいい半七は、恋人・お仙の前で見せる優しい表情も魅力的。お仙はなかなか自分に仕事のことを教えてくれない半七に対しふてくされたような表情を見せるが、半七が横浜へ旅立つ際「きっと無事で帰って来てね」と声をかける。そんなお仙に、「大丈夫だよ」と応えるのだが、この時の半七の優しい声と、お仙との温かいやり取りは、江戸末期の情緒纏綿たる世界観とも相まって、より印象的なシーンに仕上がっている。