『ブギウギ』“ほぼ毎週”のステージはいかにして作られているのか 「買物ブギ」撮影の裏側
NHK連続テレビ小説『ブギウギ』が現在放送中。“ブギの女王”と呼ばれる笠置シヅ子をモデルに、大阪の銭湯の看板娘・花田鈴子=福来スズ子(趣里)が戦後のスターへと上り詰めていく姿を描く。 【写真】「買物ブギ」で圧巻パフォーマンスのスズ子(趣里) 昭和25年春、家政婦の大野晶子(木野花)を迎えたスズ子の私生活は落ち着く一方で、歌手としては「もっと売れるレコードを」とプレッシャーをかけられる日々に、息苦しさを感じていた。 同じく羽鳥(草彅剛)も“ブギのネタ切れ”を嘆いていたが、第103話で大野に買い物を頼まれたスズ子の言動から「なるほどねぇ」と「買物ブギ」を思いつく。史実では、作曲家の服部良一が落語から着想を得て同曲が誕生しており、このアレンジについて制作統括の福岡利武はこう語る。 「この楽曲は、戦争で物が買えない時代から買える時代になった喜びを表現する歌でもありますが、非常に生活感のある歌でもあります。その“生活感”を大事に描いてきた『ブギウギ』としては、スズ子の生活の一部から着想を得た、とさせていただいた方が面白く見られるのではないかなと。そのまま買い物姿でステージを披露する流れも含めて、〈わてほんまによういわんわ〉といった歌詞がスズ子の日常に聞こえたらいいなと思いました」 第106話では、スズ子が「買物ブギ」を初披露。福岡は「すごく難しい曲ですが、他の作業をしているスタッフも撮影現場に見に来るほどの楽しい歌に仕上がっていました。今までの積み重ねかと思いますが、本当に面白いステージになったと思います。趣里さんもいい意味で肩の力が抜けていましたし、自信が出てきたところもあるのかもしれません」と、趣里の成長ぶりを称賛する。 初めてスズ子のステージを目にしたタケシ(三浦獠太)の覚醒したかのような顔つきも印象的だったが、「三浦さん自身、『趣里さんすごい!』と熱く語っていました。ステージを袖から実際に観ていますし、三浦さんは素直な方なので、その迫力と凄みをそのまま受け取られたんだと思います」と、あくまで自然な表情を捉えたものだと明かす。 そんな趣里のパフォーマンスをさらに引き立てたのが、華やかな美術セット。福岡は「“とにかくステージを楽しく見せたい”ということが美術スタッフとの共通認識です。その中で演出の荻田(浩一)さん含めて話し合い、パネルをひっくり返したり、“OSSAN”が出てきたり……古典的なアイデアですが、古臭くなく、楽しく見せられたのは良かったかなと思います」とした。 『ブギウギ』ではほとんど週に一度、何かしらのパフォーマンスを放送してきたが、キャスト、スタッフの休みを確保しながらそれをクリアするため、朝ドラの通例である“月曜日にリハーサル、火水木金に撮影”といったスケジュールにとらわれずに撮影を実施。ステージのリハーサルはしっかりと行う一方で、芝居部分のリハーサルを極力少なくすることで趣里の負担を減らし、空き時間にステージの衣装のフィッティングやメイクの確認、歌や踊りの練習をしてきたという。 劇中ではスズ子が〈ややこし、ややこし〉と「買物ブギ」の歌詞に苦戦するが、趣里は毎回、約1カ月で新曲を仕上げるペースで撮影に取り組んできたといい、「事前に音源と歌が入ったデモはお渡ししていますが、その頃はその頃で別のステージを準備していただかなくてはいけないので、本当にあっちをやって、こっちをやって、というかたちで進めていました。「買物ブギ」の本格的な練習は撮影の合間を縫って11月頃から始まり、ステージは12月の末に撮影しました」と振り返る。 あらためて福岡は「そうとう大変だったと思う」と趣里を慮り、「歌唱ステージの姿がどんどん魅力的に成長していくところまで表現できているのはすごいことですし、本当に頭が下がります。でも、面白いと思うんですよね。これくらい毎週のように歌が出てきたら楽しいじゃないですか。とはいえ、なかなかチャレンジングな企画だったなと自分でも思います」と本音をのぞかせた。 第23週の予告には、病床に伏す梅吉(柳葉敏郎)や、産みの母であるキヌ(中越典子)の姿もあり、いよいよ物語も佳境へ。一方で、新たなビジネスパートナーとなったタケシと歩み始めたスズ子の、ますますパワーアップしたステージにも期待したい。
nakamura omame