世界で唯一、自ら損をする日本のズワイガニ漁 このままでは千載一遇の好機を逸する
2023年の年末カニ商戦は好調でした。これはカニの輸入価格が大幅に下がったことにあります。大幅に下がった理由は、米国が2023年6月下旬からロシアのウクライナ侵攻の制裁として、ロシア産水産物の輸入禁止に踏み切ったためです。 このため、ヒートしていた国際買付け競争が落ち着き、タラバガニも含めカニの輸入価格が大きく下がったのです。しかし、現在の状況は一時的に過ぎません。 このままでは需要増加による買付け競争再開で、価格は再び上昇傾向になるでしょう。そこで、ポテンシャルはあるものの、とてももったいない国産ズワイガニの資源管理の話をしましょう。 下のグラフは、毎年輸入の主力を占める、ロシア産の冷凍ズワイガニの価格推移です。ロシア産ズワイガニの比率は2023年(11月までのデータ)で全体の約7割と最大です。 23年(11月まで)の輸入価格はキロ1890円でした。22年(同)のキロ3024円に比べて約4割(37%)も値下がりしています。 ところで上のグラフで見れば、10年ほど前の輸入価格はキロ1000円前後で推移していたことがわかります。販売好調の要因となった安い価格ですが、23年に輸入価格がキロ2000円弱に下がりました。しかしこれは、いったん3000円~3500円前後まで上がった前年価格に対して下がったに過ぎないのです。国際的な需要増加に伴い、2000年~13年頃にキロ1000円前後だった価格まで下がることはもうないでしょう。
意外と知られていないズワイガニのオスとメス
下の写真をご覧ください。大きさに差がありますが、ともに親ガニです。ズワイガニのオスはメスよりかなり大きいことをご存知でしょうか? 卵を抱える「ふんどし」の大きさで違いはわかります。 皆さんが購入しているズワイガニの大半は、輸入されたオスのズワイガニです。オスに比べて安いメスのズワイガニは、日本が輸入しているロシア、米国、カナダ、ノルウェーなどでは漁獲されません。 なぜなら各国とも、実際に漁獲できる漁獲量より小さい漁獲枠で漁をしているからです。オスより安い卵を持った産卵前の貴重なズワイガニを水揚げしてしまうのは、筆者が知る限り日本だけです。