楳図かずおさん死去 88歳 先月には新作制作を発表 郷ひろみ楽曲作詞など多彩な活動の半生を振り返る
『漂流教室』や『まことちゃん』など、ホラーからSF、ギャグ漫画まで幅広く手がけた漫画家の楳図かずおさんが、先月28日に88歳で亡くなりました。漫画家だけでなく音楽家、映画監督など多彩に活躍した楳図さんの半生を振り返ります。 【画像】楳図かずおさんが制作中の最新作『JAVA 洞窟の女王』
■ヒット作連発 社会現象にもなったギャグ“グワシ”も誕生
1936年、和歌山県に生まれた楳図さん。小学校4年生で漫画を描き始め、高校3年生の時に『別世界』・『森の兄妹』を出版しデビュー。『へび少女』『猫目小僧』などのヒット作により、“ホラー漫画の神様”と呼ばれ、1975年には、『漂流教室』ほかで一連の作品で『第20回小学館漫画賞』を受賞しました。 一方で、1971年から『少年サンデー増刊号』や『週刊少年サンデー』で読み切り作品として掲載され、1976年から『週刊少年サンデー』で連載された、幼稚園児の沢田まことが主人公のギャグ漫画『まことちゃん』がヒット。作中に登場するギャグ“グワシ”は社会現象となりました。
■漫画家だけでなく音楽活動など多彩に活躍
また楳図さんは、1975年には全曲作詞作曲したアルバム作品を発表するなど音楽活動も行い、歌手の郷ひろみさんの楽曲『寒い夜明け』を手がけるなど作詞家としても活動。ピアノを独学でマスターし、譜面も自分で書けるほどの腕前を持つ楳図さんは、74歳でデビューシングル『新宿烏』をリリースするなど、音楽活動も熱心に取り組んでいました。 また、2014年には楳図さんの作品創作を解き明かす自叙伝的なホラー映画『マザー』で77歳にして映画監督デビューを果たすなど、漫画家だけでなく音楽家、映画監督など多彩なジャンルで活躍しました。
■2024年には新作制作中と発表
2019年には、“芸術文化の振興に多大な貢献をした”として『文化庁長官表彰』を受賞。さらに、2022年には自身27年ぶりとなる新作『ZOKU-SHINGO 小さなロボット シンゴ美術館』を発表。この作品は、制作期間4年をかけ、コマ割りではなく、一枚一枚が独立したアクリル絵画による101点の連作という方式で作られました。 そして2023年に、楳図さんのホラー・SF・ギャグと幅広い分野でのマンガ文化への貢献と27年ぶりに発表した新作が評価され、『手塚治虫文化賞』特別賞を受賞。この時の贈呈式後のトークイベントで楳図さんは、“漫画を描く際に狙っているもの”について聞かれ「人間の一番根源的なものを描きたい。それがどういうものか普段分かっているわけではないですけど、心理的なものの中にあると思う。それをつかみ取りたい」と自身の創作論を明かしていました。 また10月2日には、『ZOKU-SHINGO 小さなロボット シンゴ美術館』と同じく“連作絵画”という形式での新作『JAVA 洞窟の女王』を制作していることが発表されていました。 楳図さんの葬儀は、すでに関係者のみで執り行われたということです。