『地面師たち』『水ダウ』で怪演の76歳俳優「なりすまし老人役は“まさに今の私”です」借金、大病、独居暮らし…激動人生でも役者を続けるワケ
『水ダウ』無言の老人役は「不気味な仕事でした」
――ピエール瀧さんとは白石和彌監督の映画『凶悪』でもご共演されていますね。 五頭:はい、瀧さんに殴られ生き埋めにされる役でした。なぜか瀧さんにいじめられる役が多いですね(笑)。『凶悪』が白石監督との出会いの作品でもあり、その後、ドラマ『フルーツ宅配便』(テレビ東京系)やAmazon Prime Video『仮面ライダーBLACK SUN』でも使っていただきました。そのまま私で当て書きするかのようにご依頼いただいたのが映画『死刑に至る病』でした。白石監督にはご縁をいただき感謝しております。 ――それらの役も『地面師たち』でのブレイクにより再注目されていますよね。中でも『水曜日のダウンタウン』(TBS)で「無言の老人」として登場したシーンも「怖い!」と話題です。 五頭:あれね……。ロケ地のキャンプ場のバンガローで待機しつつ、日没後に落とし穴に落ちてる芸人さんを「とにかく動かず見つめて」と言われて。再現ドラマに出るよりもキツかったです(笑)。だって落とされて可哀想な芸人さんを無表情で見つめ続けるなんて……涙が出ました。私にとってもキツくて不気味な仕事でした(笑)。 ――セリフがないのもしんどいですね(笑)。五頭さんは6種類の方言を駆使するそうですが、どのように取得したんですか? 五頭:ほとんどは20代から入って全国巡業していた、劇団時代に演じた様々な役で身につけたものです。幼少期からラジオでよく聞いていた民話の影響もあるかもしれません。民話にはいろんな地域の方言が入っているので。いろんな方言が耳に馴染み深くて、自然と喋れるようになっていきました。
小林幸子と『のど自慢』に!「演劇に生涯を捧げるつもり」
――幼い頃から役者になりたかったんですか。 五頭:本当は歌手にもなりたかったんです。高校生の時にNHK『のど自慢』の故郷の新潟会場にも出ましたよ。その当時は同じ新潟出身者の小林幸子さんも出ていて、いつも彼女が優勝していました。僕は学ラン着て『あゝ上野駅』を歌いましたが残念ながらでした(笑)。 ――そうなのですね。それがなぜ役者に。 五頭:歌うことも演じることでしょ。高校生の時に市民劇団の公演を観て衝撃を受け、自分とは別の人間を演じることに魅力を感じ、演劇サークルを作ったんです。違う人になった姿を観てもらう喜びや楽しさを知ってしまったんです。小さい頃からモノマネが上手いねと言われることに喜びを感じていたし、単純に演じることが好きだったんです。 ――好きなことを追い続けたんですね。 五頭:ずっとそうしてきました。演劇に生涯を捧げるつもりできたから、一度の事実婚はしたものの、子供も作らず家庭というものは持たなかった。まあその後、下顎の骨が溶ける病気をして顔の左側に金属プレートを入れる手術を何度もして……その後、胃がんも患っているので、それどころではなかった時期もありました。