新技術や新しい価値観を部下に学ぶリバースメンタリング、生成AIの分野では逆にリスクに
■ 先端領域では若手社員もシニア同然に初心者 プロジェクトレベルでの介入とは、たとえば「コンサルタントとマネジャーが、生成AIを信頼して使用できる条件を決定する」というように、特定のプロジェクトにおける対策を決めておくことで、予期せぬ問題を避けることを目指す手法を指している。 これに対して生成AIの専門家は、システムを提供する側や、AIのモデルを開発する開発者など、生成AIに関わる「エコシステム」全体で解決を目指すべきだと指摘している。 たとえば、システム開発者・導入者がAIの精度を評価するフレームワークをあらかじめ定めておき、さらにそれを継続的に監視する仕組みを組み込んでおくことで、自動的・組織的にリスクを把握できるようにするといった具合だ。 また、生成AIのモデルを開発する側に対し、危険な質問がされた場合にそれに反応しないよう、モデルを厳格にトレーニングしておくよう要請するといった対応も考えられる。 若手社員はどうしても、目の前の作業や、参加しているプロジェクトだけに目が向いてしまい、それを越えた提案ができなくなることが多い。それはある意味で当然のことであり、第3のポイントはリバースメンタリング自体が抱えるリスクと言えるだろう。 特に生成AIの場合、社外で開発されたモデルやシステムを導入することが一般的なため、エコシステム全体で考えようという姿勢が希薄になるのも仕方ない。この点では逆に、シニア社員の方が有効な提案ができるかもしれない。 生成AIのように急速に進化する新技術を利用する際、メリットだけでなくリスクも生じる。それに対処するという点においては、いくらその新技術に日ごろから接している若手社員であっても、シニア社員と同様に依然として初心者なのだ。 だからといって彼らを排除するのではなく、若手社員とシニア社員が対等な立場で、協力して新技術のベストプラクティスを模索する姿勢が求められていると言えるのではないだろうか。 【小林 啓倫】 経営コンサルタント。1973年東京都生まれ。獨協大学卒、筑波大学大学院修士課程修了。 システムエンジニアとしてキャリアを積んだ後、米バブソン大学にてMBAを取得。その後コンサルティングファーム、国内ベンチャー企業、大手メーカー等で先端テクノロジーを活用した事業開発に取り組む。著書に『FinTechが変える! 金融×テクノロジーが生み出す新たなビジネス』『ドローン・ビジネスの衝撃』『IoTビジネスモデル革命』(朝日新聞出版)、訳書に『ソーシャル物理学』(草思社)、『データ・アナリティクス3.0』(日経BP)、『情報セキュリティの敗北史』(白揚社)など多数。先端テクノロジーのビジネス活用に関するセミナーも多数手がける。 Twitter: @akihito Facebook: http://www.facebook.com/akihito.kobayashi
小林 啓倫