「15年分のホコリが人生の痕跡」膵臓がんで1カ月でこの世を去った義父…離婚後、誰にも見せなかった“あまりにも孤独すぎる”ゴミ屋敷
今回は亡くなった後のことだったが、もし義父が生きていれば同じ言葉を本人に投げかけたことだろう。 しかし、「ゴミ屋敷の住人は、大丈夫じゃなくても周りに心配かけたくないからつい“大丈夫”と言ってしまうんです」と、二見氏が話す。 「“大丈夫”という言葉自体が、ある種のSOSなんじゃないかと思うときもあります。実際、人にゴミ屋敷の相談をするってなかなか難しい。 今回のようなケースを取り上げると、よく視聴者さんからまるで親を見放していたかのような指摘が入ることがあります。
でも、毎月のように顔を合わせていても、外で会っていた場合、実は実家がゴミ屋敷になっていたなんてことはよくある。いつも家に上がっていたのに急に入れてくれなくなったとしたら気付くかもしれないですが、そうでもない限りゴミ屋敷であることを見抜くことは難しいと思います」 そこで二見氏が訴えるのは、「どう察知するか」ではなく「そうなったときにどうするか」。ゴミ屋敷が発覚したときに、「なんでこんなことになったの?」「なんで言ってくれなかったの?」と責めてしまえば、またゴミがたまり出したときに萎縮して相談ができなくなる。そして、またゴミ屋敷になってしまう。
「1回目は仕方ないと思っています。なら、2回目をどう防ぐかに重点を置いたほうがいい。“これから頑張っていこう”と、前を向いた言葉をかけてあげることが大切です。ただ、これは人によって正解が違うので本当に難しいんです」(二見氏) ■そして、ゴミ屋敷まっしぐら 「次はこうなる前に相談してね」 一見すると配慮した優しい言葉のように思えるが、仮にまた部屋が荒れてしまったとしたらどうだろうか。 すでに事後なのでもう相談ができない。というより、もともと相談ができない性格だから1回目も相談ができなかったのだ。そして、ゴミ屋敷まっしぐらである。
では、事前策として「部屋の掃除はできてる?」と定期的に声をかけたらどうだろうか。つねに気にかけてくれている存在であると思う一方、「信用されていない」「監視されているみたいだ」と不信感やプレッシャーを感じ、パンクしてしまうかもしれない。 そうなってくると、何をどうしたらいいのかわからなくなってくるが、二見氏の言うとおり、これには本当に正解がないのだ。しかし、だからこそ、イーブイのような業者が誰にも相談できない人がすがることのできる場所として存在しているのである。
【写真】「こんなのまだ残してたんや…」義父の生活の痕跡が残るゴミまみれの部屋(45枚)
國友 公司 :ルポライター