平野紫耀の新たな扉、神宮寺勇太の透明な声、岸優太の本心……Number_i、挑戦のアルバム『No.Ⅰ』全曲解説
岸優太のソロ曲の込められたメッセージ、ファンへの思いを込めた楽曲も
■Recipe 平野と神宮寺がそれぞれ敬愛するアーティストとソロ楽曲を制作したのに対し、岸のソロ楽曲はセルフプロデュース。加えて自身作曲、さらにギター演奏にも参加する形で作品を届けるところも、いつも想像を超えて驚かせ、楽しませてくれる岸らしい。〈It’s okay to sing a song with a guitar out of tune〉と歌われているとおり、部屋のなかでそっと歌われているようなボーカルとミニマルなサウンド。英詞が多めなのは、聴き心地の好さを追求したものだろう。〈誰かのために背伸びしてばかりで/ぐらついた自尊心 たてなおせたらいいな〉といった心の揺れも歌われており、「頑張りすぎなくていい」と伝えてくれるような、優しい温度感を持つ楽曲だ。 ■iLY メンバー全員プロデュースの楽曲。6月の有明アリーナ公演期間に制作を始め、それぞれの歌唱パートは自身が作詞を手がけたという。Number_iのファンネーム・iLYsは、「I Love You」の略にsをつけた“愛しい人たち”という意味だ。Number_iを左、iLYsを右に置けば“i=愛”で手が繋がれるわけで、ファンへの愛のメッセージソングであること、タイトルにsがないのは一人ひとりに向けて歌われているからだということが伝わってくる。曲順通りに聴けば、アルバムに収録される新曲はこれがラスト。ファン想いの彼ららしいあたたかなナンバーでアルバムの第一部が締めくくられるのだ。 ■GOAT アルバムはここから、既発曲がリリース順に収録されている。Number_iの始まりの歌であり、鮮烈なデビューを飾った「GOAT」は、リリースから9カ月が経った今は序章に過ぎなかったのだと感じる。これ以降も彼らは、独創的なアイデアと自分たちがリアルタイムに伝えたいことを上手く楽曲に落とし込み、唯一無二の作品を生み出していった印象だ。その原点である「GOAT」=“Greatest of All Time”(史上最高)は、常に高みを目指す彼らを象徴する楽曲としてあり続けるだろう。 ■Blow Your Cover 3月にリリースされた1stシングル『GOAT』収録曲であり、4月にシングルカットされた一曲。HIPHOP調の「GOAT」とはまったく異なるメロウなR&Bで、Number_iの楽曲の多彩さを示したと同時に、彼らの表現力の幅を広げた楽曲だと思う。大人の恋愛を描いた楽曲という点でいえば、その要素は今作で「ICE」に引き継がれており、新たに得た引き出しをまた次に活かしていく彼らの姿を、一枚のアルバムで辿ることができる。 ■BON 『No.O -ring-』のリードトラック。日本文化を感じさせる言葉の数々、曲中で取り入れられている和楽器は、プロデュースした平野によれば「from Japanらしさを出したかった」のだという。海外でも人気が高まりつつある盆栽に目をつけ、自分たちの成長ストーリーになぞらえた平野の鋭さ。さらには、盆栽を支える針金をファンとの関係性に喩えたのもユニークだ。スピード感のある展開がクセになると同時に、日本を背負って世界へ行くという彼らの強い姿勢が伝わってくる楽曲。 ■INZM (Hyper Band ver.) 〈繋がっちまった終着駅はスタートラインへ〉とも告げるように、アルバムは「INZM」で始まり、再び「INZM」で幕を閉じる。最後に配置された「INZM (Hyper Band ver.)」は、生バンドを取り入れ、楽曲のロック要素を前面に打ち出したアレンジ版。原曲との違いを確認するために1曲目に戻り、そのままもう一周聴くことを促すような構成はニクいし、偶然か否か、「INZM」のMVがループするストーリーだったのとも繋がっているように感じてしまう。〈3本指咥える123〉と勢いよく終わるあたりに、次なる4作目への期待も高まる。 ※1:https://open.spotify.com/playlist/37i9dQZF1DXcFVWnEfsf1X
かなざわまゆ