ロックバンドの存在意義を示した「ツタロックDIG Vol.14 OSAKA」現地レポ
気迫を見せた606号室、巨大な安心感をもたらしたレトマイ、自分達の様々な魅力を詰め込んだガラクタ
4組目も大阪から606号室。 昇栄(Vo.Gt)が「606号室始めます。どうぞよろしく」と挨拶すると、すぐさま「君のことは」の印象的なキーボードのイントロが円花(Pf.Cho)によって鳴らされる。ゆうあ(Ba)とくわ(Dr)のリズム隊の2人もいきなりトップギアを入れた躍動感のある演奏を見せ、初のBIGCATという舞台での気迫が1曲目から伝わる。そのまま昇栄は叫ぶように「あなたのことは全部分かってあげれないけど、あなたが苦しいと思う夜くらいは、俺たちの音楽で支えに来ました。『いつだって青春』!」と次の曲に繋げる。力強さをそのままに、この”正解のない世界”を生きる難しさを正直に歌うこの曲のメッセージを、フロアもしっかり受け止めてクラップや拳で反応する。そして畳み掛けるように「大親友、おざきゆうあ」という掛け声と共に空間を揺らすようなベースが鳴らされて「抱きしめてやる」がスタート。ひょっとしたらこのバンドをピアノロックの優しい歌ものバンドと思っている人も多いかもしれないが、シャウトもあるし、力技でBIGCATに名前で刻んでいこうとする圧力を感じた。 いつにも増してパンキッシュな前半を終え、MCに入る。来てくれたことへの感謝を伝えた後「『ツタロックDIG』は実は出るのが3回目で。1回目はオーディションで東京(『ツタロックDIG LIVE Vol.12-EXTRA-』)のオープニングアクトを出させていただいて、2回目も東京(『ツタロックDIG LIVE vol.13』)のクロージングアクトで15分間の演奏させてもらって、今日3回目で30分もらいました。ありがとうございます」と話すとフロアから拍手が起こる。その後、ゆうあが止めても昇栄がBIGCATでどうしても話したかった猫の話をして和やかになった後、周りからバンドを始めることを反対されながらもメンバーが1人ずつ増え、夢を追ってここまで来たことを話し「まだギターも弾けない時に、18歳の僕が1人ベランダで書いた曲を」と言って「静寂の夜に」を始める。徐々にメンバーの音が重なっていく様が魅力的なドラマチックなバラードだが、それは紆余曲折を経てこの4人が出会い、今BIGCATに揃っている背景と重なる。続けて「なかなか思い通りにいかない日々の中で、あなたが新しく来る朝を愛するように歌います」と優しい空気に包み込むナンバー「明日になれば」に繋げた。 「まだまだいけますか、BIGCAT! 次の曲、めちゃくちゃ楽しい曲やるんで俺たちと一緒に歌ってくれますか? 跳んでくれますか!」と問いかけて始まったのは「スーパーヒーロー」。全員が手を掲げながら跳びはねるフロアは1人だけの力ではない特別な何かに溢れる。この日が体調不良からの復帰ライブとなった円花が力強く手を上げながらキーボードを弾く姿は印象的だった。そして「ラスト1曲! 俺たちから最大の強がりなラブソングを」と「未恋」を演奏。2度のツタロック出演からも慢心せず、歩みを決して止めず掴み取った4人だからこそ生まれた満員のフロアから上がる何百もの拳とフロアに振ってもしっかり返ってきたサビの合唱。これにて終了かと思いきや「やっぱりこんなんじゃ終われないんで!」と2度目の「抱きしめてやる」を投下。30分でも最後まで切れなかったこの気迫。まだまだ大きなステージに連れて行ってくれることを予感させた。 5組目は大阪北摂からレトロマイガール!!。関西勢3連発であり、本日最後の関西勢。 1曲目の「君と夕焼け」の人懐こいメロディはグッと会場を掴み、そして花菜(Gt.Vo)も会場の1人1人の”君”を見渡して指差しながら「いけますかー?」と会場を煽る。自然体に、それでもしっかり右肩上がりに会場の温度を上げていき、後方のお客さんも元気に手を振る。続く「映画で会いましょう」では、変わらず花菜のボーカルは真っ直ぐ入ってきながら、あやき(Ba.Cho)とひらおか(Dr .cho)のBメロやサビでの<ねぇねぇダーリン聞いてよ>のコーラスも印象的。ライブだからこそ感じる、3人からの強いエネルギーに会場は包まれていた。 「昨日配信開始された新曲をやります」と披露されたのは「夏が過ぎて」。軽快なドライブビートと持ち味のコーラスワークで魅せるだけでなく、あやきのボーカルパートもある楽曲。会場はしっかり盛り上がった。 ここでMCに入り、花菜が挨拶をした後「BIGCAT楽しんでますか?」と聞くと当然と言わんばかりの拍手が秒で返ってくる。「我々は大阪を拠点に活動しているんですけど、大阪のバンドマンは皆BIGCAT大好きなんですよ。デカいし、楽しいし。今日はいっぱい友達も出ているので、皆見て帰ろうと思ってます。よろしくお願いします」と話し、「高校生の時に作った曲を」と「24時」を鳴らす。ここまでとはうって変わってしっとりとしたバラード。本日唯一の女性ボーカルが歌う、自分の後悔や情けなさも丸裸に伝わるこの楽曲に、学生世代の女性が多く見えたフロアもじっくり受け取っているように見えた。そしてライブ前日に配信されたもう1つの新曲「落陽」も披露。ギターが唸り上げ、地面から突き上げてくるようなイントロから始まり、雄大さを感じるサウンドはステージ上の3人の果てしないスケールの大きさを感じさせるには十分な1曲だった。 「またパワーアップして帰ってきます。ありがとうございました。レトロマイガール!!でした!」と最後のMCをした後、ベースの軽快なリズムが鳴って始まったのは「グッドバイマイタウン」。<大丈夫さ>と繰り返し歌うこの曲と最後まで伸びやかな歌声とサウンドに自然とクラップも起きるし、何より彼らにフロアが安心感を感じているのが伝わる。シンプルに楽しい気分なのに、うっかり涙が出る人もいたのではないだろうか。そして「最後、みんなで楽しんで帰れますか!」と猪突猛進な楽曲「バンジー!」を投下。ひらおかのドラムプレイもエンストするんじゃないかというくらい止まらない。間違いなく1つのアトラクションを体感した気分にさせてライブは終了した。 人は圧倒的な草原とか山とか海とかの自然を見ると心が安らぐもの。レトマイのライブにはそれを思わせるような音の力がある。だからこそこの長尺イベントの中盤という難しいポジションでも存在感を示すことができたと感じた。 6組目に登場したのは名古屋からガラクタ。 まずは疾走感のある「どこか」でスタート。ここまで登場してきたバンドに負けないスピード感とエネルギー。こた(Gt)も何度も前に出てギターを弾き倒して会場を盛り上げる。勢いそのままに「一生片想い」「1分1秒」と息を落ち着かせないナンバーを畳み掛ける。 MCではる(Vo.Gt)は「BIGCATというバンド史上1番デカいキャパでやらせてもらってます」と感謝し、「ですけども、いつも通り宝物みたいなライブを届ければと思うので、最後までよろしくお願いします!」と力強く話した。そして優しくギターを鳴らしながら「大切なラブソングを歌います」と「ラブレター」を演奏。「今日ここに来てくれた1人1人に」という言葉通り、BIGCATというキャパにいる人数分の胸にしっかり届いていた。続く「相変わらず、愛変わらず」も温かみのあるバラード。会場全体がゆっくりと体を揺らす様は、そよ風に揺れる稲穂のよう。2曲ともひろと(Ba)の優しいベースラインが聴き込まれ、最後のちゅうじょう(Dr)のドラムが丁寧に叩き終えるまで、しっかり引き込まれていた。他のイベントで見た時もそうだが、このバンドは本当にバラードを周りに惑わされず、しっかり届けて結果を出してくれる。”これが自分達の戦い方”という自信を感じて見ていて気持ちいい。 続くMCでは「今日は長尺なんで適度に水分補給して、休憩して楽しんでください」と気遣いながらも、「リハでもやった新曲を皆でブチ上げてやっていきたいんですけど皆できますか!」と他のバンドに負けじと盛り上げようとする気の強さも見せる。ちゅうじょうのドラムのリズムにすぐフロアは高々としたクラップで応え「いいね!」とはる。そしてクラップが鳴り響き続ける中、新曲「UFO」を披露。心をほぐすようなこのサウンドはこれからもライブに欠かせない楽曲となるだろう。 そしてここから再び畳み掛けゾーン開始。まずは彼らの名前を広めた「アイラブユーが足りないの」。間奏では「ツタロックそんなもんか。もっといけるっしょ!」と煽り、応えたフロアに「最高!」とコミュニケーションもバッチリ。そしてさらなる新曲「デートしよ!」を投下。「どこか」や「1分1秒」に匹敵する高速ショートチューンに全員のテンションは大盛り上がり。そして息つく間もなく「貴方依存症」に繋ぐが、4人のリズム感は終始強固で崩れないし、どの曲のワードもスッと入ってくる耳馴染みの良さがあるから、会場も一体感がすぐ生まれる。そして最後は再び「1分1秒」をプレイし、最後の力を振り絞った彼ら。バラードでも、ミディアムチューンでも、高速ショートナンバーでも、心にキラキラとしたものを沢山送り届けた30分だった。