フレンドリーで果てしなく清々しい。サウジでシリアサポーターに驚かされた。印象に残った日本代表選手はまさかの――【現地発】
「Are you Japanese?」「Japan! Japan! Japan!」
日本代表は現地時間11月21日、北中米ワールドカップ・アジア2次予選で、シリア代表と対戦した。 【動画】え?ファーに打つの? 久保は驚いていた菅原の日本代表初ゴール この一戦は、シリアのホームゲームではあるが、国内情勢を鑑み、サウジアラビアで開催された。それでも会場となったプリンスアブドゥラー・アルファイサル・スタジアムには、多くのシリアサポーターが来場した。発表された観衆は6130人、日本側がごく少数だったため、およそ6000人が駆けつけたこととなる。 キックオフの1時間半前。意気揚々とスタンド入りするサポーターの様子を見ていると、物珍しそうに、次々と私に声を掛けてきた。 「Are you Japanese?」 「Japan! Japan! Japan!」 あまりの人懐っこさに自分から話しかけてみると、子どもたちを引率するある男性は、両手の高さの違いで、日本の強さ、あるいはシリアの弱さを教えてくれた。ニュアンスとサービス精神から察するに、おそらく前者だったはずだ。 やがて試合開始が近付き、母国の選手たちがウォーミングアップでピッチに姿を現わすと、鳴り物混じりの大応援がスタート。コールリーダーもいるようで、一体感はばっちりだ。応援テーマには耳馴染みのある『喜びの歌』も使われ、気付けばペンを走らせながら、頭を揺らしている自分がいた。もう1つよく聞くメロディが流れたが、残念ながら名前が分からない。 そして迎えたキックオフ。応援はヒートアップし、日本にアウェー感を植え付けた。ただ、この試合で日本代表初ゴールを挙げた菅原由勢は、「もちろん(相手の)声援はありましたけど、別に僕はあんまりアウェーとかホームとか気にせずにいつもやっているので、まったく気にせずプレーできた」ようだ。
ノートに書かれた文字は「HonA」
しばらくスコアレスが続き、「オレたちは日本相手にも互角に戦えるんだ!」とばかりに、より一層スタンドが沸き立つなか、32分に久保建英の先制点が決まる。 すると、記者席の目の前に座る少年は、両手の指で「0-1」を作った後、「2-1」に握り直し、大層ご丁寧に逆転可能だとアピールしてきた。だが彼の目論見は外れ、直後に上田綺世が連続ゴール。3点目が入った時、少年はもう一度こちらに振り向き、やれやれとジェスチャーを送った。点差が開き、少し心が折れてしまったようだ。 そのまま3-0でハーフタイムになると、男性2人組が話しかけてきた。日本の強さに感服した様子で、しきりに「Japan is good」と褒めてくれるではないか。 せっかくなので「印象に残っている選手はいる?」と訊いてみたが、英語が得意ではないようで、首をかしげられてしまった。それならばとノートに質問を書いて渡すと、「OK, OK」と納得。ただ、返されたノートに書かれていたのは「HonA」。いったい誰だ? 今度は自分が首をかしげていると、直後にGoogle検索した本田圭佑の写真を嬉しそうに見せてくれた。なるほど、でも自分は前半で目に留まった日本代表選手を訊いたつもりだったが...。 その後、日本の5-0での完勝でタイムアップ。とはいえ、シリア応援団の気持ちのこもったエールは、最後まで続いた。なんとサッカー熱に溢れた人々だ――。だがしかし、最も驚かされたのは、スタジアムの外に出た際だ。 日本人記者を見たサポーターは一様に、ハーフタイムの2人組がそうだったように、「Japan is good」と親指を突き立ててきたのである。 森保ジャパンに真っ向勝負を挑んだチームのファンは、フレンドリーで、果てしなく清々しかった。 取材・文●有園僚真(サッカーダイジェストWeb編集部)