後輩俳優に憧れられる29歳・佐藤流司の思い「俺が一番上手い(笑)」「絶対、追いつけないように」
31日公開の映画『邪魚隊/ジャッコタイ』に主演
俳優・アーティストの佐藤流司(29)が、今月31日公開の映画『邪魚隊/ジャッコタイ』に主演している。「ムビ×ステ」と銘打った同作は、8、9月には舞台『邪魚隊/ジャッコタイ』を同じキャストでミュージカル時代劇として上演する。2.5次元舞台の売れっ子俳優、音楽バンドのボーカル、ダークヒーローが似合う目力の強さ…さまざまな顔を持つ佐藤が、自身の表現スタイルを語った。(取材・文=大宮高史) 【写真】カメラに向かって“挑発的な”視線…佐藤流司のクールな表情 江戸時代が舞台なのに、ラップやロックな音楽が飛び出すのが『邪魚隊/ジャッコタイ』。幕府の密命で、死刑囚4人組による隠密部隊『邪魚隊』が、謎の集団『お太鼓教』への潜入捜査に踏み出す。一癖も二癖もある邪魚隊をまとめるのが、佐藤が扮する元スリの鱗蔵だ。着流しに長髪で無頼漢ぶりを醸し出す。コミカルなかぶき者を演じた佐藤は、撮影を照れながら振り返った。 「自分のお芝居を見返すのって結構、恥ずかしいんです。今回はミュージカルでしたから余計にです。舞台とはまた別で、カメラに向かって歌い踊るのは照れてしまいますね」 そして、同作ならではのシーンも説明した。 「時代劇ゆえの作法はありつつ、かなり自由にやらせてもらいました。着物でアクションをするというのも映像では初めてですが、きれいにバサッと裾が広がって、俺のスネまではだけてセクシーなところまで、並みの映画では見られないシーンです(笑)。鱗蔵は一見ワルそうですが、仲間に支えられて成長していくところが人間くさくて好きです。歌にダンスに立ち回りと、ずっと研さんしてきたスキルを見せられることで、この作品の力になれていればと思います」 撮影は昨夏、猛暑の京都で行われたという。 「カットせずに、長回しでアクションを撮ることにチャレンジしてみました。舞台経験の多い俳優がそろったので、その方がより迫力のあるパフォーマンスを撮れるのではないかと。おかげで皆が『失敗できない』という緊張感を持って臨んで、臨場感ある映像になったと思います。アクションのカメラワークって『細かくコマ割りすればするほど迫力が増す』と思っていたので、意外な発見でした」 佐藤は16歳で俳優デビューすると、2.5次元舞台で当たり役が続いた。『ミュージカル忍たま乱太郎』の田村三木ヱ門、ミュージカル『刀剣乱舞』の加州清光、ライブ・スペクタクル『NARUTO』のうちはサスケ、『呪術廻戦』の主人公の虎杖悠仁などの役で躍動。バンド『The Brow Beat』のボーカルや4人組ダンスボーカルユニット・ZIPANG OPERAのメンバーとしても活動し、ビジュアル系風のいでたちも似合う。目力の強さで、ダークヒーロー役でも魅力的に見せてきた。 「かつて、出演した舞台のブロデューサーに『闇が似合うところがいいね』と言われたことを覚えています。確かに、日の光を一身に浴びて育ってきたような明るさ100%の人間ではないなという自覚もあります。だからこそ、取材や撮影でも満面の笑顔をオーダーされると、実は内心『うわっ。苦手だ』とぎこちなく思っています。歯に衣着せない性格で生きてきたので、鱗蔵の鼻っ柱の強さも俺のルーツにも合っていて、得意分野です」 鱗蔵はぶっきらぼうな振る舞いの裏で、仲間思いな面も持つ。佐藤は熱さが同居するところまで、自身に似たキャラクターだと感じている。 「クールな芝居もやりやすいのは確かですが、お客様の感情を十二分に動かすには足りないかなと思っています。芝居をやるにあたって、役者が演技に苦闘すればするほど、より感動を与えられると思うんです。そういった役者としての熱さも隠さずに見せた方が、芝居に込めた感情もストレートに客席に伝えられます」 『ミュージカル時代劇』がコンセプトの本作は、佐藤と同じく、若手ながらも個性豊かな俳優がそろった。お太鼓教の用心棒には妖艶な役も得意な玉城裕規、邪魚隊の仲間は舞台でしばしばマッチョな肉体も披露してきた肉体派俳優の小柳心、邪魚隊に協力する侍の水野平馬は、ミュージカル『テニスの王子様』3rdシーズン で主人公を演じた阿久津仁愛が演じている。 「玉城裕規くんは、俺はデビューしたての頃から『格好いい俳優だな』と思っていて、何歳になっても格好いいし、芝居も魅力的です。小柳心くんはどんな役柄でも表情豊かで引き出しが多い人です。その分、鮒右衛門のような寡黙な役は意外に感じますし、彼にとっても新境地になったかも。そして、平馬の阿久津仁愛くんは、すごく真っ直ぐで素直で『絶対、人に好かれるだろうな』と思います。鱗蔵としても俺自身としても、放っておけない存在でした」 共演者の印象を語る中でも、佐藤は笑いながら「やっぱり、『俺が一番上手いぜ』と思っていますけど」と言った。 「俺に憧れて俳優を目指したという後輩に結構、出会えるようになりました。うれしいとともに、彼らの憧れに恥じない役者でい続けるために『絶対、追いつけないようにもっと頑張ろう』と思います。誰にも負けない強みを持ちつつ、どの俳優にも唯一無二の美点があると思います。そこを謙虚に吸収して、地に足つけて成長していきたいですね」